6月19日の文教児童青少年委員会、豊渓中学校の統廃合について地域で実施された説明会の報告がありました。委員会では練馬区が統廃合を進めるために23区で最も厳しい基準に変更したのではないかと厳しく指摘するとともに、住民の合意や理解が得られていない中で、統廃合計画を確定しないよう求めました。

説明会の概要について


6月19日の文教児童青少年委員会では「区立学校適正配置第二次実施計画(素案)に係る説明会および保護者に対する個別面談の実施状況について」豊渓中学校の統廃合に関わる説明会の報告がありました。

22【資料16】区立学校適正配置第二次実施計画(素案)に係る説明会および保護者に対する個別面談の実施状況について

1月と3月に2回実施された全体説明会にはそれぞれ80名以上が参加し、動画視聴者もアーカイブの視聴者も含めると300名を超えています。

あわせて、保護者に対して5月に実施した個別面談では延べ5回で23組が参加しています。

私も2回の全体説明会に参加しました。参加者からの意見は住民合意なしでの統廃合を進めることへの反対、小規模校として存続することの意義、地域と学校との結びつきの強さなど、その大半は統廃合の中止を求めるものでした(内容はこちらをご覧ください)。

なお、個別説明会においては統廃合に賛成とした方が4世帯、反対の方が7世帯、その他は賛否が不明とのこと。

住民の意見に対する練馬区の回答


住民からの意見に対して、委員会で報告された練馬区の回答は以下のとおりです。

  1.  現在よりも通学距離が遠くなる旭町二丁目・三丁目に居住する生徒に対して、交通ルールの徹底やヘルメットの着用等のルールを定めたうえ で、希望者には自転車通学ができるようにすること。
  2.  豊渓中の体育館を残し、現在の豊渓中・旭町小両校における避難拠点 としての体育館面積は減らさないこと。また、跡施設については、地域の 意見を聞きながら検討していくこと。
  3.  統合直前の時期が受験期に当たらないように、指定校変更時期を前倒しすること(統合2年前→3年前)。
  4.  計画策定時期を変更し、4月以降も保護者や地域と協議を継続すること。

豊渓中学校統廃合のために、練馬区は基準を23区で最も厳しくした?


今回、練馬区は保護者の要望を受けて自転車通学を認めると回答しています。しかし23区では徒歩圏内に学校を設置するのが前提であり、23区における全ての小中学校1180校(小学校809校、中学校371校、2024年度)の中で、自転車通学を認めているのはわずか1校(江戸川区)。豊渓中学校が閉校した場合、通学距離が最も遠い家庭では2.3キロ(区説明)に達し、区内でも通学距離が最も遠い学区になります。

そもそも練馬区で2005年に策定された「区立小中学校適正配置の方針」において、通学距離の目安は小学校で1キロ、中学校では2キロまでと定めていました。ところが、昨年策定されたの第二次方針では突如として距離を以下のように変更しています。

 

第二次区立小・中学校および区立幼稚園の適正配置基本方針

「適正配置を行う場合、一部の児童・生徒は通学距離がこれまでより延びる可能性があります。これまで、教育委員会では通学距離の目安を小学校1km、中学校1.5kmとしていましたが、学区域が広い学校では目安の距離を超えて通学しているなど、各校で実態は大きく異なります。今後は、概ね30分程度を目安とし、小学校1.5km、中学校2km程度を目安とします。

今回の変更について23区の状況を区に確認したところ、練馬区が23区で最も遠い距離を学区域にしているとのこと。しかも、練馬区は2キロを徒歩で概ね30分としていますが、足立区などでは30分を1.8キロと計算するなど、私の調べた限りでも練馬区の子どもだけ歩くのが早く、かつ遠くまで通うことを前提としています。

(筆者作成)

このことからも豊渓中学校を廃校にすることを前提に通学距離の基準を23区で最も厳しい内容に変えたのではないかと考えます。さらに、今回は閉校することで2キロすらも大きく超えてしまう、自転車通学を可とするのではなく、学校自体を残すべきです。

統廃合決定前の指定校変更の前倒しは否定


また今回の説明では指定校変更時期を2年前から3年前に前倒しするとのこと。当初の計画では2029年度に閉校する予定ですので、このままでは2026年度、つまり来年度から指定校変更が可能となります。しかし、統廃合が決定していない中で、指定校変更だけを前倒しすることは、統廃合を既成事実としてしまうものであり、その結果、豊渓中学校に通う子どもの数が激減する恐れもあります。厳しく抗議したところ、統廃合の決定前に指定校変更を前倒しすることはないとの回答を得ました。

さらなる全体説明会の実施は約束せず


住民からは今までの説明では不十分であり、3回目の集合形式の説明会を望む声が多く出ています。しかし、練馬区は個別説明を望む声も多かったとして、3回目の実施については「適切なタイミングで、やり方については検討する」と明言せず。住民への理解を求めるのであれば、住民から非常に強い要望のある3回目の全体説明会を一刻も早く実施すべきです。

今後の予定…住民合意なしの決定は中止を

練馬区は7月以降に新たな計画案を委員会で報告、計画案について改めてパブコメを募集、そのうえで計画決定を行うとのこと。

文科省は「公立小学校の統廃合をお考えのみなさまへ」自治体向けパンフレット(2025年3月)を発行。その中で地域の合意形成を図ることの重要性を以下のように述べています。

豊渓中は中学校としては区内唯一のコミュニティスクールでもあり、地域の結びつきが非常に強い学校です。文科省の資料でも、「学校統廃合が困難な場合や、地域の実情により小規模校として存続させることが必要な場合もある」と明記されています。

地域の合意形成や理解も進んでいない中で統廃合計画は一端、白紙撤回すべきです。ご意見などありましたらぜひお寄せください。これまでの訴えはこちらをご覧ください。