6月2日から始まった練馬区議会定例会の初日、住民の方から出された陳情第68号「練馬区立美術館・貫井図書館の建て替え計画を白紙にし、再検討を求めることについて」に賛成、請願第4号「練馬区立美術館・貫井図書館の再整備について」に反対の立場で討論を行いました。

練馬区立美術館、および貫井図書館の建て替えについて陳情では934名から反対、請願では551名の住民から賛成の意思が示されていました。陳情を審査した際の資料は下記のリンクをご覧ください。

01【資料1】文教 陳情第68号 練馬区立美術館・貫井図書館の建て替え計画を白紙にし、再検討を求めることについて

01 【資料1】区民生活 陳情第68号 練馬区立美術館・貫井図書館の建て替え計画を白紙にし、再検討を求めることについて

討論の結果、美術館の建て替え中止を求める陳情は、自民党、公明党、練馬会議、立憲民主党、みどりの風、参政党、維新の会の反対により不採択となりました。

1.議会・区民に都合の悪い情報を隠すのか…

美術館建替え計画の中止を求める最大の理由の一つは、練馬区が議会や区民に対し、都合の悪い情報を開示してこなかったことにあります。練馬区はこの間、建て替えについて適宜・適切に説明を行っていると繰り返してきました。しかし、事実は異なります。

象徴的なのが区民の最大の関心事である建て替えの費用について。昨年11月時点で概算額が109億円と判明していたにも関わらず、議会への報告はまったくなく、初めて明らかになったのは本年1月末の新聞報道によるものでした。さらに2月の予算委員会で109億円の内訳を求めたにも関わらず、練馬区は拒否。3か月が経過した5月の陳情の審査の際に判断を改め、ようやく開示しています。こうした対応のどこが適宜、適切なのでしょうか?

また、サンライフ練馬の廃止に伴い消失する研修室の対応も同様です。練馬区は当初、現在の200平米を大きく超える300平米を確保し、より充実した環境になると説明。その後、基本設計の段階で倉庫を入れて261平米になると修正しつつも「現状以上」と強調していました。しかし5月の陳情審査の際に初めて示された図面では、面積には倉庫だけでなく、階段や廊下も含まれている事が判明、実際に利用できる空間は現在のサンライフ練馬の研修室より少ないことが明らかに。区は今頃になって「現状以上」とは広さではないと説明していますが、到底納得できるものではありません。

2.総額がいくらになるのか、いまだに不明…

続いて費用について。5月の陳情審査で初めて示された費用の内訳をみると、昨年2月から11月まで、わずか9カ月で本体工事費だけで20%も増加していることが判明しました。しかも、そこから7か月が経過した現時点の金額については、価格の上昇の恐れもあるとしながら現時点では不明と回答を拒否しています。では、いつになったらわかるのか、練馬区は12月、実施設計の後としています。わずか9カ月で総額が1.2倍に増加している中、あまりに遅いと言わざるを得ません。区は青天井ではないと繰り返していますが、上限価格も示せないなかで、これを青天井でなければ何と呼ぶのでしょうか。

3.財源について

総工費が膨らむ中で、財源も問題です。委員会で視察したすみだ北斎美術館、総工費の85%は国や都からのまちづくり交付金、残りはすべて寄付で賄い、区の持ち出しはゼロでした。他方で練馬区では、現時点で国や都からの補助の見込みはないと回答、区民からの寄付を募るクラウドファンディングについて、4月から6月末まで実施していますが、半分以上が経過した6月2日現在の寄付者は練馬区全体でわずか13名、目標達成率は14%。10年で基金が底をつくといわれる練馬区で危機的な状況です。

4.工事期間が当初の2年から4年に延期!さらなる遅れも…

工事期間についても、当初は2025年度から2027年度までだったのが、現在は2029年度までと2年も遅れ、更なる開館の遅れも否定していません。つまり、4年以上も美術館のみならず、図書館も使えなくなる恐れがあります。特に、中高生の学習にも利用でき、非常にニーズの高い70以上の閲覧席については、近隣の民間施設を探しているもののいまだに1か所も確保できていないということです。

5.まとめ

私たちは美術の大切さを否定するものではありません。しかし、区民が最も関心を持っている「いくらになるのか」「いつできるのか」「維持にいくらかかるのか」何一つ明らかになっていない中で、また、4年におよぶ休館の代替機能すら十分に確保できていない中で、どうやったら賛成できるのでしょうか。練馬区は今年度中には解体を開始するとしていますが、既成事実を作って建て替えを強行しようとしているようにしかみえません。練馬区が行うべきことは、まだ十分に利用できる美術館を建て替えるよりも米の高騰など、生活に困窮する区民への支援を充実することです。以上をもって、陳情第68号に賛成、請願4号に反対の討論を終わります。

今後について

残念ながら陳情は不採択となってしまいましたが、今後も美術館の建て替えについて議会で反対の声をあげていきます。これまでの訴えはこちらをご覧ください。