横浜の寿町(ことぶき町、簡易宿泊所街。ドヤ街とも)の「なか伝道所」の元牧師で、結婚式を司式頂いた渡辺英俊牧師にお会いして来ました。

渡辺英俊先生は、1980年代には移住労働者・難民支援の「カラバオの会」を寿町で立ち上げに参加され、「移住労働者と連帯する全国ネットワーク」の共同代表等を歴任され、日本の移住労働者や難民等の権利保護ための活動の先頭に長く立ってこられました。その先生が活動の基盤とされていた寿町といえば、大阪の釜ヶ崎、東京の三谷に続く「三大ドヤ街」。かつては日雇いまたは不安定な就労形態の元で働く労働者・(元)路上生活者や移住労働者・難民等が多く暮らしておられた地域で、今は高齢者・障害や心身の疾患を持つ方が多く暮らしておられ、衣食住医の保障と、人との「つながり」とソーシャルインクルージョンを理念とした街づくりが、地域住民が主体となって行われてきました。

数々のエピソードのなかでも、アルコール依存症の克服のためのグループに携わり、中毒症状で人を殺めてしまった日本人住民を刑務所に迎えに行って、再犯しないようにシフトをくんで交代で見守ったご経験をお伺いした時は、自分のしてきたことの薄っぺらさに恥ずかしくなりました。
御年90歳。愛する奥様に先立たれ闘病されるも、自立した自炊生活をされながらまだまだ、世の中の最新の動きを把握・研究され、最近お隣に引っ越してきた外国人住民を気遣ってその国の言葉を勉強し始めたと笑顔で仰る、渡辺先生。米国留学やフィリピン駐在のため英語も堪能で、鋭い知見と謙虚さと弱い立場の人への深い愛にあふれ、私の周りのクリスチャンの人たちの言葉で言えば、「イエス様の教えを体現している」「イエス様のような」渡辺先生。

ご自身はすでに引退されているのですが「なか伝道所」を引き継ぐ牧師さんがいらっしゃらないことも心配され、信徒の皆様のことを気遣われていました。

そんな渡辺先生の数々のご著書のなかでも、最新の執筆に参加された『横浜寿町・地域活動の社会史』(社会評論社)には、アメリカの占領改革と戦後復興の1945年から77年間の寿町の歴史が刻まれていて、「福祉国家」とは何かという大きな問題提起・示唆がなされています。ぜひご一読ください。