令和6年練馬区議会第1回定例会の最終日、令和6年度予算案の採決が行われました。私達は2024年度一般会計、国民健康保険事業会計、介護保険会計、後期高齢者医療会計の予算に反対しました。

最終的には私達(インクル)、共産党、生活ネット、つながる、れいわ練馬が反対、自民党、公明党、立憲民主党、練馬会議、維新の会、みどりの風、参政党が賛成して可決されました。

反対した理由について、議会で意見表明を行いましたのでご覧ください。

2024年度の一般会計予算は「まだまだ大きく発展するまち・ねりま」を掲げ、前年度比で8.2%増、過去最大となる3,230億8,836万円としています。しかし、練馬区が志向する「発展」は私達や多くの住民が希求するものとは異なるもの。今回の予算は物価高や重税に苦しみながらも、地域で必死に暮らす一人ひとりに寄り添うものにはなっていません。

まず、練馬区は来年度予算の第一として「子ども達の笑顔輝くまち」をうたっています。しかし、練馬区の描く「子どもの笑顔」とは何でしょうか?区立谷原保育園においては、延べ2万人以上もの反対の声を無視し、閉園という名目で民営化を強行。1歳児の保護者から求められていた、「子ども達の笑顔のために、せめて1年の引継ぎ期間を設けて欲しいという思い」すら拒絶。閉園について「一円たりとも無駄にしない」と説明しています。コスト削減のために区立園を閉園することが本当に区民全体の利益なのか、練馬区が言う子どもの笑顔とは何なのでしょうか。

また、急増する不登校の子ども達への支援について、区は予算で「不登校対策の充実」を掲げ、個別の状況に応じた支援を実施すると表明。しかし、適応指導教室においては、茶髪での通室は禁止などという子どもの尊厳を無視したルールを設け、長年にわたり多くの子どもを排除してきました。ルールの見直しを求めた所、「健康状態を把握するために必要」としていまだに正当化しています。昨年、自ら策定した「不登校対策基本方針」で「誰一人とり残さない」と謳っていながら、その言葉は空疎なものでしかありません。

能登半島での地震を受けて、練馬区は「災害リスクに応じた「攻めの防災」の加速化」を予算の柱に掲げました。現地の避難所で特に女性が苦労しているという状況を受け、練馬区は女性防災リーダーを増やすと発言。しかし、その目的は避難所での「女子力を活かす」ためと明言。なぜ能登半島地震の惨状を目にして「女子力を活かす」などという言葉を使えるのか。あまりに時代錯誤かつ練馬区のジェンダー意識の欠如を示すもの。このような感覚で災害対策を行っていること自体が非常に問題です。

予算では「持続可能な財政運営の堅持に取り組む」といいますが、まだ38年しか経過していない練馬区立美術館と貫井美術館の建替え。当初は総額81億円を上限としていたのが、物価高騰や週休2日の導入などで、基本設計の段階で100億円近くまで上昇、しかも今後いくらまで上昇するか区として想像もできないとのこと。そもそも、施設の建替えにおいてはバリアフリーを第一の目的としていたにもかかわらず、基本設計ではエスカレーターは上りしか設置されておらず、その理由を「バリアフリーよりも展示動線を優先した」と説明。当初の目的すら失われているのであれば建て替え自体を見直すべきです。同時に石神井公園駅前南口西地区再開発では、住民による裁判が続いているにもかかわらず、事業を強行。物価高騰が続く中で、当初30億円と言われていた石神井庁舎移転のための3フロアの買取も今後いくらになるのか、予想できないとのこと。練馬区は一体何を大切にしているのでしょうか。

また、練馬区にとって最も重要な財産である緑。予算では「練馬の緑を未来へ繋ぐ」として、稲荷山公園の整備を謳っています。同計画はカタクリを守ることを目的としていますが、長年に亘ってカタクリを守り増やしてきた地域住民の声を無視して、管理を誤り、減少させてきたのは練馬区自身です。そのうえで地域の400世帯を超える住居を立ち退かせようとするのはあまりに残酷です。しかも除却には少なくとも1万トンを超えるCO2が排出されるにも関わらずその影響を試算することも無く、回復に何十年かかるかの予測もしていません。なぜ200億円以上もの税金をかけて、地球温暖化をさらに加速させるのか、練馬区が行うべきことは住宅地の真ん中に新しい公園を作ることではなく、今ある生産緑地や緑を残すことです。

練馬区は予算で「区民とともに区政をすすめる」としていますが、練馬区の言う区民には区の方針に賛成の住民しか含まれないのでしょうか。私たちが求めるのは、反対する区民の声にも真摯に耳を傾け、丁寧に対応することです。練馬区が何を大切にすべきか、皆さんからお預かりしている税金を何に使うべきか、区民の声に耳を傾けることを求め、意見表明とします。