2024年12月13日、令和6年第4回定例会の最終日に陳情第61号「家族法制見直しに際し、子どもの安全を重視した慎重な議論を求める意見書提出を求めることについて」に採択すべきの立場で討論を行いました。採決の結果、自民、公明、立憲、ねりま会議、維新、参政党などの反対で否決されました。結果はこちらからご覧ください。
討論の内容は以下の通りです。
インクルーシブな練馬をめざす会を代表して、陳情第61号「家族法制見直しに際し、子どもの安全を重視した慎重な議論を求める意見書提出を求めることについて」に採択すべきの立場で討論を行います。
同陳情の要旨は、2026年度から施行予定の民法改正法で定められた離婚後の共同親権について、実態の調査を行うとともに慎重な対応を国に求めるものです。
同法が議論される中で、DV被害者をはじめ司法、医療・教育・福祉の現場からも悲鳴のような反対の声が挙がっていたことを皆さまもご存じだと思います。オンライン署名でも24万人以上が反対し、司法の現場からは、全国の20を超える弁護士会が反対の声明を発表、医療の最前線からは日本産科婦人科学会など4学会も反対の声明を発表、こうした現場の声を無視することはできません。
本法の最大の問題は、離婚する父母が合意していなくても、裁判所が離婚後の共同親権を認められる点です。本年3月に内閣府が発表したDVに関する調査では4人に1人が配偶者から暴力を受けたことがあると答えています。こうした中で、離婚しても配偶者から逃れられない「共同親権」の導入をすすめることは、別居している親による干渉、支配を復活、継続する手段にもなりえます。
例えば、子どもに歯列矯正をさせる、留学のためにパスポートを取得する、引っ越しをする。共同親権になると、これら全てに父母双方の合意が必要です。合意が取れない場合、最終的には「裁判所で手続き」となりますが、裁判には膨大な時間と費用が掛かるなかで、結果として子どもの権利や福祉が損なわれてしまう危険が否定できません。
練馬区は今回の陳情審査にあたり、離婚後共同親権を導入するメリットとして、
- 離婚後も両親からの愛情が受け続けられ、さまざまな体験ができる
- 父母の都合による引き離しや奪い合い等の精神的負担が軽減される
- よりどころが2拠点ある
ことを例示しました。しかし、こうしたメリットは全て父母や親子間の関係性によるもので、離婚後の共同親権の有無とは全く関係がありません。
単独親権制度のもとでも、民法により、信頼関係が破綻していない元夫婦は協力し合って子を育てられる制度となっており、実際そのようにしている元夫婦は数多く存在し、現行制度でも共同親権は実現できています。つまり法改正が必要な事情がないということを区自らが今回明らかにしています。
あるべき共同親権の導入には、子どもの意見を十分に踏まえた「親権」を考える事が必要です。そもそもこの法改正の理由は「子どもの権利利益の保護」とされています。しかし、
改正法の中には、子ども自身の権利や意見表明権が十分に位置づけられていません。親の権利だけでなく、子どもの権利についても改めて盛り込むべきです。
憲法24条は、離婚や婚姻、家族に関する法律のあり方について、「個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない」と定めています。当事者間に合意のない「共同」の強制は、「個人としての尊重」を最も大切な価値とする憲法との整合性さえ問われます。
「精神的、身体的暴力を受けている母親や、子どもたちが逃げられなくなる」
「DV被害者やその子どもが離婚後も苦しめられ続ける」という当事者からに耳を傾けるべきです。個人の尊重や子どもの権利に基づく、あり方こそを求めます。以上をもって陳情61号に対する賛成討論といたします。
採決の結果、私達(インクル)、共産、ネット、つながる、れいわの賛成に対し、自民、公明、立憲、練馬会議、維新(一部を除く)、みどりの風、参政党の反対で否決されました。
結果は残念ですが、今後も共同親権の問題点について議会でも訴えていきます。