人質になっていたフリージャーナリストの後藤健二さんが殺害された。ここ何日も気が気ではなかったが、ニュースを見て心臓が押しつぶされる気がした。
国際協力に携わってきた者として、私の中で、どこかで「思いは伝わる」というようなナイーブとも言える希望があっただろう。怒りと湧いてくる、悲しみ。世界にはまさに、後藤さんのような人がもっと必要だったのに。
後藤さんは戦争・難民・貧困・エイズ・子どもの教育、の5つの人道分野を中心に、困難な環境の中で暮らす弱者に寄り添って取材を続けていた。
日本そして世界の大手メディアが報道しない、しかし私達が知るべき現実・惨状を伝え、平和の尊さを訴え続けていた。UNICEFやUNHCRなど国連の人道支援機関との繋がりも強く、日本全国で講演会や学校での授業など数多く行い、平和教育もしていた。多くの貴重な著書も出版している。さぞ無念であったろう。
現在のシリアを含む紛争が泥沼化していることにも、ISIS/ISILがここまで大きくなってしまったことにも、私たちは責任の一端を担っているのではないか。
後藤さんの言葉。
「私が取材に訪れる場所は、耐えがたい困難がある。けれどもその中で人々が暮らし、生活を営んでいる場所です。困難の中にある人達の暮らしと心に寄り添いたいと思うのです。彼らには伝えたいメッセージが必ずあります。それを世界に向けてその様子を発信することで、何か解決策が見つかるかも知れない。そうすれば私の仕事は「成功」ということになるのでは・・・」
後藤さんの死を無駄にしないために、私には何ができるのか。
考えても考えてもまだ答えは出ない。今はただ、後藤さんのご冥福と、残されたご家族のために祈ることしかできない。