<マイナンバー勉強会(マイナンバーの問題と私たちにできること>

昨日、市民の声ねりま主催でマイナンバー勉強会を行いました。講師には「共通番号いらないネット」世話人の白石孝さんにお越しいただきした。会場には80名分の席を用意したのですがあっという間に満席に。マイナンバーが間もなく本格施行される中での皆さんの高い関心を実感しました。

今回は、主に
1) マイナンバーの問題点、
2) マイナンバー導入に向けた練馬区独自の取組、
3) マイナンバー制度反対のために私たちができること、について勉強しました。

1) マイナンバーの問題点 a) マイナンバーの範囲が拡大され、国家による監視が高まる。
マイナンバーの問題として最も大きいものが、今後マイナンバーの範囲が拡大されるとともに、国による個人の監視、統制が高まる恐れが強いということです。

まず、範囲の拡大について、政府は当初、使用範囲を税や社会保障、災害対策の三分野に限定していました。しかし、施行前の9月には、既に預貯金口座などにも拡大されました。さらに、今後の方針を示した「マイナンバー制度利活用推進ロードマップ(案)」によると「マイナンバーカードの健康保険証との統合」や「クレジット機能の追加」なども提案されています。

政府の計画では、2016年3月までに個人カード(マイナンバーカード)を1,000万枚発行、そして2019年3月までには8,700万枚発行することを目標としています。これは、日本の経済人口の80~90%に相当しており、この時点で、現在は任意のマイナンバーカードの保有が義務になることが予想されます。そして、このことによって、国による個人の監視、管理が可能となります。

b) 情報漏えいや不正利用のリスク
個人情報の管理はシステムにおいても運用においても大きなリスクを負っています。個人情報は一度流出したら取り返しがつきません。

例えば、先行するアメリカでは、2006年~2008年に、なりすまし犯罪の被害は1170万件(16歳以上の人口の5%)、損害額は約173億ドル(約2兆円)と言われています。また、韓国でも大統領を含む数千万件の個人情報が流出しました。

こうした状況を踏まえて、韓国やカナダでは民間分野での利用禁止や規制、アメリカでは省庁により独自番号の切り替えなど、共通番号の見直しを進む動きがみられています。そうした中、日本が新たに官民分野の多岐にわたる共通番号を導入するのは時代の流れに逆行しています。

c) 多額の費用が必要
マイナンバー制度の導入のための14~15年度政府予算は最終的には3000億円程度。地方自治体についても国が負担とされていたにもかかわらず、5月の政府答弁で3,000億円が必要とされています。ここ練馬区でも本年度、システム改修やカードの通知だけで8億円、このうち4割にあたる3億円以上は(住民税も含む地方税など)一般財源からだされています。

2) 練馬区独自のマイナンバーの利用
マイナンバーについて、たくさんの問題が噴出している中で、人口が約72万人のここ練馬区では、マイナンバーの普及に関して2年後には26万枚にまでしたいとしています。

その方法について、区の考えとしては、現在20万枚ほど発行されている印鑑登録カードと住基カードについて、これをマイナンバーカードと一体化することで26万枚を目指すとのこと。

また、マイナンバーカードの導入を促進するために、コンビニで住民票の写しや戸籍謄抄本も含む証明書の発行を行えるようにする、との方針も出しています。しかし、対面での本人確認がないまま個人情報を手軽に引き出すことが出来るというのは、被害が出れば影響は甚大です。特に戸籍情報については非常に慎重な取扱いが求められる中で、コンビニでの自動交付というのはあまりにもリスクが大きいと言わざるを得ません。

3) マイナンバー制度反対のためにできること
そうした中、マイナンバー制度が普及するのを防ぐために私たちは何ができるのでしょうか?
まず、マイナンバーは住民票があるすべての国民に自動的に付与されていることから、番号が付けられること自体を拒否することはできません。

そうした中、私たちにできることは、まずは「マイナンバーカード」の発行を申請しないことです。
番号を通知する「通知カード」は11月には各世帯に自動的に郵送されますが、その後、写真付きの「マイナンバーカード」を作るかは任意です。

だからこそ、まずはこれを申請しないことで政府の計画しているマイナンバーカード普及に対して反対の意思表示をすることができます。

同時に、自治体独自の運用、特に範囲の拡大に反対することが必要です。練馬区を含む各自治体でもカードを普及するためにコンビニでの利用や印鑑証明カードや住基カードとの一体化を含めた新たな条例を作ろうとすることが予想されます。だからこそ、こうした地方自治体の活動を監視するとともに、地域からしっかりと反対の声を挙げることが必要です。

マイナンバー制度が抱える問題について、丁寧かつ具体的にお話いただいて、とてもわかりやいものでした。特に、政府が国民の官民にまたがるすべてのデータを一元的に管理しようとするというのは、独裁国家のやり方だ、という意見は非常に印象に残りました。マイナンバー制度自体の導入は決まってしまいましたが、実際の運用を含めて、大切なのはこれからの対応です。私たちも地域の中で、しっかりと監視していきたいと思います。