議会の合間、区政報告会や区政レポート(かわら版)の作成などを行っていますが、それもひと段落。そこで3月に発行された憲法学者の樋口陽一先生と小林節先生の著書『「憲法改正」の真実』(集英社新書)を読みました。実は樋口先生は学部時代(法学部)のゼミ(比較憲法)の恩師である上に、この本を編集した責任者は妻が大学院の時にお世話になった同級生でもあります。
この著書、「護憲派の泰斗(樋口陽一)、改憲派の重鎮(小林節)の対談」がキャッチフレーズであるように、そもそも二人が取る立場は全くの反対です。しかし、立憲主義や国民主権について理解が不足している現政権、憲法を破壊しようとする権力に対しては、護憲派も改憲派もその違いを乗り越えて闘わなくてはならないと語られています。
そして、安倍政権の状況を分析するために、自民党の改正草案についても分析しており、これについては「憲法と呼べる代物ではない」「自民党案なら日本は先進国の資格を失う」(小林先生)と言い切っています。自民党改憲案は戦前の明治憲法への回帰ではなく、明治以前(慶安の御触れ書き)への回帰であるとのこと。
実は私が法学部でゼミを選択する時期に、樋口先生が東大を退官されて早稲田の教授に着任されました。着任して一年目ということで、ゼミの人数も少なく、生徒はわずか4名程度。そんな中で、毎週樋口先生から憲法について伺えたこと、私の大きな財産になっています。特に印象に残っているのが、繰り返し強調されていた(この本でも指摘されています)「日本国憲法で一番肝心な条文を一つだけ言えと言われたら13条。すべての国民が「個人」として尊重されるということは憲法の要である」という言葉です。それが私にとって、憲法を守らなければならない、と思う原点になっていましたが、自民党案はこの「個人」を否定しようとしています。
9条に関しては、ODAの専門家として紛争国で仕事をした時の経験が自分の確信を強くしました。例えばウガンダで活動をした際に、元少年兵で今はドライバーをしている若者から、「日本は戦争をしないことを約束した国だと聞いている。そんな素晴らしい国があるなんて本当に羨ましい」と言われました。パキスタンで自爆テロが起こった時は、「武力は暴力と復讐の連鎖しか生まない。なんでそんな単純なことがわからない?」とパキスタン人の友人が悔しそうに言っており、「それがまさに9条が防ごうと思っているものだ!」と感じたものです。この9条についても、「現行9条の弱点を克服するには」「歴史認識を放置したままの改正は危険」というようなタイトルで、まさにそこが聞きたかったという議論が樋口先生と小林先生との間でなされています。
憲法論議に関して、単に「改正反対」というアプローチではなく、多面的で現実的な視点から非常にわかりやすく纏められていて、勉強になりました。素晴らしい本なので、宜しかったらぜひ皆さまもお読みください!