八ヶ岳の南のふもと、北杜市の森の中に、地域の子どもたちひっきりなしに出入りしている、まるでシルバニアファミリーの家のようなログハウスがあります。「八ヶ岳のコンちゃん」こと近藤貞子さんは、日本の音楽教育家の故・羽仁 協子さんの初期のお弟子さんで、日本の保育改革に携わられ、私もお世話になっている練馬区の日本キリスト教団大泉教会にも来られていましたが、 43年前に単身で山梨へ。山仲間たちが週末ごとに集ってログハウスを建ててくれ、花農家をして自然のなかで暮らしつつ、何百人という、地域や、練馬区など遠方から来た子どもたちを癒し育てて来られました。

現在、世界を股にかけ迫害や紛争を逃れる難民の支援に奔走する妻も、中学でのイジメで不登校になった時に練馬・大泉からコンちゃんの家に「退避」して癒され、今の自分があるそう。留学や海外赴任からの帰国のたびに八ヶ岳に帰りたいと言う、妻の心の故郷です。このたび、うちの息子もお邪魔して来ました。

学校や家庭に居づらさ等を抱えた子どもたちが、農作業を手伝いながら近藤さんに話を聞いてもらったり、農園でとれた果物でジャムをつくったり、手づくりのアスレチックで遊んだり。彼女の家は地域の子どもたちの拠点となり、妻一家の例のように、やがて子どもや孫を連れて、コンちゃんの家に帰ってきます。12月には 子どもたちが一年中楽しみにしているクリスマス会。コンちゃん手描きのおたよりが森の掲示板に貼ってあるのを見て続々と集まってきます。それでコンちゃんはいつしか「コンタクロース」と言われるようになったのだとか。大泉教会にも毎年、クリスマスに夢のような蝋燭飾りやリースを届けて下さっていました。

ただ、そのコンちゃんも御年80代半ばに差し掛かり、ログハウスを引き継ぐ人がいないそう。コミュニティが失われつつある今、成長を見守ってくれる親族以外の大人の存在は、かけがえのないもの。こういう場・取り組みが引き継がれていったらどんなに良いだろうと思いながら、「また行きたい~」とねだる息子のキラキラした目を眺めています。