練馬区議会、令和6年第3回定例会、最終日にマイナ保険証の導入に向けた条例改正に対して、反対の立場から討論を行いました。
最終的に反対したのは、インクル(私達)、共産党、生活ネット、つながる、れいわ練馬の12名。自民党、公明党、立憲民主党、練馬会議、維新の会、みどりの風、参政党の合計38名が賛成し、可決されました。非常に残念です。
【はじめに】
議案第69号、「練馬区国民健康保険条例の一部を改正する条例」に反対の立場から討論を行います。本議案は、「被保険者証が廃止されることに伴い、被保険者証の返還に応じない場合の罰則規定を削るほか、規定の整備を行うもの」で、マイナンバーカードの健康保険証利用、いわゆるマイナ保険証の導入および、既存の紙の保険証の廃止を前提にしたものです。マイナ保険証の導入には、課題が山積しています。
【論点1.マイナ保険証の強制は法律に違反している】
まず前提として、マイナンバーカードの取得は法的に義務付けられておらず、あくまでも任意であり、そのことは法的にも裏付けられています。にも関わらず、紙の保険証を廃止することは事実上、国民にマイナナンバーカードの取得を義務付けるものであり、自由意志に基づくという立法趣旨から逸脱しています。
【論点2.利用者が少ない】
また、厚労省の資料によると、マイナンバーカードの保有率は8月末現在で、人口全体の74.8%、そのうちマイナ保険証の登録率は80.6%に達しているものの、実際の利用実績はわずか12.43%、すなわち全体でみるとわずか9.3%に過ぎません。9割以上の方は紙の保険証を使用しており、マイナ保険証の必要性など全く感じていません。
さらに、本格導入を前に、マイナ保険証の登録を解除したいと訴えても、政府は10月から解除に応じるとしているものの、「まだシステムのテスト中」として開始日すら決まっていない状況です。
【論点3.個人情報漏洩への不安】
なぜ多くの方がマイナ保険証を選ばないのでしょうか?
第一に個人情報漏洩に関する不安があります。健康保険証の機能も含め、マイナンバーカードに多くの情報を統合することで、第三者による個人情報の不正取得・悪用のリスクが増大しており、情報漏洩が発生した場合、その影響は計り知れません。こうした状況について、世田谷区の保坂区長も「個人が自分の存在にかかわる情報を開示する範囲を選択できるという『自己情報コントロール権』の観点が欠けている。」と指摘しています。
【論点4.マイナ保険証の不具合の発生】
第二の問題として、マイナ保険証の読み取りによる不具合も多く報告されています。全国保険医団体連合会(保団連)が9月に発表した中間集計結果によると、回答した1万242医療機関のうち69.7%に当たる7134機関が5月以降に不具合を経験しています。具体的には端末で読み取れなかったり、読み取った名前や住所が不正確だったりしたとのことで、他人の情報がひも付けられていたとの回答も155医療機関に達しています。練馬区でも多くの問題が報告されていますが、区としては、具体的にどのようなトラブルが何件、発生しているのか把握すらできていないとのことです。
【論点5.利用者にとっての課題が大きい】
また、利用者にとっては、マイナ保険証を使って受診・受付をする場合、初診も再診も関係なく、毎回4ケタの数字の入力による本人確認が必要になります。しかし、ご自身で数字を覚えられない方、入力できない方もいます。そうした方には、顔認証制度を導入していますが、練馬区でも現在、顔認証を登録しているのはわずか数十名しかいません。資格確認できなければいったん10割負担にせざるをえない。特に高齢者には不向きな制度になっています。
【論点6.使えない機関も】
さらに、委員会での報告では、区内医療機関等におけるオンライン資格確認の導入状況について、昨年12月時点で83.8%との数値であり、現時点の数値は練馬区も把握できていないとのこと。いまだにマイナ保険証を使えない医療機関が存在する恐れもあります。
<批判への反論>
現行の健康保険証について、マイナ保険証への一本化を支持する立場から「なりすまし受診」等のリスクがよく指摘されます。しかし、「なりすまし受診」「偽造」等の不正利用の件数が2017年~2022年の5年間で50件、つまり年平均わずか10件だったことが明らかにされています。実際にはほとんど「なりすまし」への効果などないわけです。
マイナンバーカードの立法趣旨、個人情報の保護、システムの信頼性、利用者の負担などを総合的に考慮し、マイナ保険証の導入を目的とした同議案について反対の答弁といたします。