建築・解体費用が当初の1.5倍、少なくとも109億円となることが判明した練馬区立美術館の建て替え、整備費の総額や完成後の維持費などが一切明かされないまま、工事着工にむけた解体を進める方針であることが明らかになりました。総額や維持費(ランニングコスト)が一切示されない中で工事に着工することなど民間ではありえないこと、区民への説明責任を果たすべきです。

練馬区は令和7年度当初予算において、美術館等の解体工事費として2億4千万円、令和8年度の費用として3億6千万円、合計で6億円を計上。2月22日に開催された令和7年度予算特別委員会(区民費・地域文化費)で美術館建て替えの妥当性について質疑を行いました。

来年度の美術館維持運営に関わる予算は以下の通りです。

(出典:練馬区

総額109億円の内訳の開示、練馬区は拒否

建築と解体の概算工事費として示された109億円の内訳を求めたものの、練馬区は

「工事予定価格の積算根拠となるもので、契約に関して財産上の利益が損なわれるおそれがある」

として開示を拒否。

しかし、契約締結は最短でも再来年度以降であり、今後も金額が大きく変更することは区が認めています。現時点の概算の、しかもごく大まかな内訳を公開することが契約に影響するとは思えません。区が開示を拒否した項目の中には、解体工事へ費やエレベータ設置費用など、既に予算計上されているものも含まれています。部分公開すら拒否をした姿勢は、議員の調査権の侵害のみならず、情報公開法の目的にも反し、議会制民主主義そのものを蔑ろにしていると指摘せざるを得ません。

整備の総額や開館後の維持費、完成の時期もいまだ不明のまま、解体へ

開館後の維持費について、練馬区は実施設計を終えた段階で計算をするとして回答を拒否。そのほかにも整備に係る工事監理費は総工事費の2-3%程度、備品購入費もこれから検討として明らかにせず。開館の時期についてもコンストラクション・マネジメントの導入によって当初計画よりも2年も伸び、最短でも令和11年度を目指すとしています。2024年夏の近隣住民説明会において、練馬区立美術館や貫井図書館は約3年にわたり利用ができないと報告がありましたが、さらに1年延び、最大で4年近くにわたって美術館、図書館の利用できない恐れもあります。総額も維持費も完成の時期すらも不明にも関わらず、練馬区は来年度中には解体に着手する方針を示しています。

当初示されていたスケジュール

(出典:練馬区

 

10年前に1.4億で整備された美術の森緑地、2.2億円で再整備へ

美術館に併設する美術の森緑地の概算工事費についても約1億9千万円に達することが明らかになりました。こちらもわずか1年で4千万円の増加になっています。さらにこれまで一度も議会に報告の無かったクマやキリンなど、美術の森の彫刻の移設等工事費として3千万円、緑地内の樹木活用等委託料としても134万円が計上され、整備に係る費用は美術館整備とは別に2億2千万円に達しています。整備に際し、練馬区は少なくとも3本の木を伐採し記念品を作成することは認めたものの、合計で何本の木を伐採するかは今後検討と回答。そもそも美術の森緑地は10年前に、開館30周年にあわせて1億4千万円をかけ整備したばかりです。工事の資材置き場等として活用するために、樹木を伐採し、2億2千万円をかけて緑地を再整備するのはアートの概念とはかけ離れています。

解体費用は当初の倍に

解体にかかる費用も令和7年度予算では解体工事費として、2億4千万円が計上、さらに債務負担行為として3億6千万円が計上しており、解体だけで6億円、当初計画の2倍になっています。練馬区は労務費や重機などの機材調達にかかる費用の上昇、技術的な難易度などを理由としていますが、技術的な難易度は最初からわかっていたはずですし、労務費についても2年で2倍にはなっておらず、当初の見込みがあまりに甘かったと思います。

練馬区は計画の見直しを!

整備費の総額や完成後の維持費などが一切明かされないまま、工事着工にむけた解体は進めることが明らかになりました。総額や維持費(ランニングコスト)が一切示されない中で工事を開始することなど民間ではありえないことです。同時期に建て替えを目指していた目黒区美術館は総工事費が当初の1.25倍に達した段階で計画を中止しています。練馬区では1.5倍に達している中で「立ち止まることはない」と答弁しています。強引に建て替えを進めるのではなく、まずは議会や区民に対する説明責任を果たすべきです。

(出典:練馬区)

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