練馬区は昨年12月、豊渓中学校を統廃合の検討校とすると発表。区立学校適正配置第二次実施計画の素案で明らかにしたもの。3月末には成案化し、決定する予定です。事前の連絡や相談もないままでの突然の発表に、生徒や保護者、地域住民からは驚きや怒り、反対の声も噴出、豊渓中学校では反対する住民の会も結成されました。2月28日の予算特別委員会では計画の白紙撤回を訴えました。
練馬区は昨年12月、豊渓中学校を過小規模と判断、統廃合の検討校とすると発表。全文はこちらをご覧ください:区立学校適正配置第二次実施計画(素案)について
しかし、豊渓中学校は地域で唯一の中学校。「おじいちゃんおばあちゃんから旭町小〜豊渓中に通っていた」というご家族も多く地域との繋がりも非常に強い学校です。
練馬区は委員会の中で
「今回の発表(統廃合の計画)に抱かれた気持ちに対して申し訳ない」
と謝罪していました。謝罪をするのであれば、4月末を予定している計画の成案化は撤回すべきです。
「5年後、10年後も愛される学校にしていきたい」
文部科学省は学校の統廃合の考え方を示した「公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引」の中で行政が一方的に進める性格のものでないことは言うまでもないとしたうえで「地域住民の十分な理解と合意を得る事の必要性」を強調しています。
(出典:公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引)
練馬区は令和3年度、地域と学校の連携に強化するために、学校運営協議会制度(いわゆるコミュニティスクール)の導入にむけたモデル校3校を指定、その中で豊渓中が唯一、中学校として選ばれています。2年の活動の後、昨年1月には有識者などからなる学校運営協議会検討委員会が報告書を作成しました。全文はこちらをご覧ください:練馬区学校運営協議会制度の導入に向けて(報告)
その中で、豊渓中学校での成果として、「これまで以上に多くの方々に子ども達の成長に関わって頂くことができた。これからも継続して、地域、保護者との連携、共同した学校づくりに取り組み、5年後も10年後も愛される学校にしていきたい」と纏めています。
(出典:練馬区学校運営協議会制度の導入に向けて(報告))
この報告書が作られたのはわずか1年前、同委員会は豊渓中学校の校長や地域コーディネータも委員に名を連ねていたほか、当時の教育振興部長(今の教育長)が副会長であり、その会がまとめた報告です。5年後、10年後も残したい、これこそが練馬区の教育委員会の本音だと信じたいです。
さらに、今年度からは学校運営協議会の本格実施も始まっています。学校運営協議会は「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」47条の5に規定された制度で、本格実施に伴って区が策定した「学校運営協議会規則」では、協議会が設置された学校の校長は、学校経営計画に関することや施設管理および施設設備等の整備に関することについて、協議会の承認を得ると明記されています。
(出典:練馬区 学校運営協議会規則)
しかし、練馬区が学校運営協議会に今回の計画を始めて説明したのは12月12日、素案が完成した後のことです。つまり、学校運営協議会の承認を得るどころか、報告すらもしていませんでした。
練馬区は法的には学校運営協議会の承認や相談の必要はないとのことでしたが、学校が無くなるかもしれないというのは協議会にとって最も重要な事項です。そこでの承認や相談すら必要ないというのであれば、練馬区が全校に設置を目指す学校運営協議会の意義すらも問われると思います。
「地域で唯一の中学校を残してください」
豊渓中学校は開校78年目、地域で唯一の中学校であり、保護者からも「おじいちゃんおばあちゃんから旭町小〜豊渓中に通っていたというご家族も多い」との声も聴いています。
地域ごとに子どもの支援に取り組む青少年育成地区委員会についても、豊渓中学校は第六地区委員会に属しますが、同地区は旭町小学校、豊渓中学校の2校のみ。地域の住民が協力して、中3を送る会を毎年行うなどきめ細かな活動を行ってきました。しかし、豊渓中学校がなくなってしまったら、練馬区が重要性を強調してきた学校を核とした地域活動の存続すら危うくなります。(区内17地区の内、小中1校ずつなのは第6地区、上石神井地区、第8地区の3区のみです。)地域で唯一の学校を残してくださいという訴えに耳を傾けるべきです。
小規模校だからこそ選んだ子どもも
練馬区は小規模のデメリットばかりを強調していますが、小規模だからこそ、豊渓中学校を選ぶ子も多くいます。令和4年度も19%の子ども達が学区外からあえて豊渓中学校を選択し、入学しています。
令和4年度区立幼稚園・小中学校の園児・児童・生徒数および学級数等について
豊渓中学校の学校説明会では、教員がライフプランニングの授業で将来を考え直し今チャレンジしている卒業生数名の話をしていたとのことです。卒業後の様子まで教員が知っていることも少人数だからこそ。教員と生徒の間で強い信頼関係も生まれています。
豊渓中学校、今後子どもの数は増える見込み
豊渓中学校の現在の生徒数は137名、令和11年度時点では153名、6学級と現在よりも生徒数が増える見込みです。令和26年度においてもほぼ同規模と予想しています。
(出典:区立学校適正配置第二次実施計画(素案))
だからこそ、統廃合ではなく小規模校のメリットを最大限に引き出すモデル校として存続させるべきです。
地域住民や保護者の方に対して、突然学校運営協議会や地域の住民がはじめて計画を知ったのは昨年12月、1月の説明会でも反対の意見が相次いでおり、全く合意形成ができていないのは明らかです。練馬区は委員会で、「今回の発表で抱かれた気持ちにたいして申し訳ない」と謝罪しています。区は3月に計画を決定するとしていますが、あまりに拙速です。5年後も10年後も愛される学校になるように、計画を撤回すべきです。こちらのブログもご覧ください。