徳川家光が鷹狩に立ち寄ったとされる石神井の三宝寺。そこにそびえていた樹齢400年超のアカマツが、ついに伐採されました。練馬区が守ってきた「ねりまの名木」は、制度開始から30年で4分の1以上が失われています。さらに、「保護」されたはずの保護樹木も半分が姿を消しています。地球温暖化が進む中で、練馬にある貴重な緑を守るためにより丁寧な対応が必要です。

歴史の証人だったアカマツが伐採―名木、さらに2本が解除


皆さんは「ねりまの名木」をご存じですか?

練馬区は23区の中でも緑が多いことで知られています。その中で、地域の象徴となってきた大木や、暮らしの中で大切に育てられてきた古木を「ねりまの名木」として、区が独自に指定してきました。制度が始まったのは1994年(平成6年)。当初は107件が登録されました。詳細はこちらをご覧ください。

それから30年。すでに約4分の1にあたる30本近くが失われているのです。

7月29日に開催された「第177回 練馬区緑化委員会」では、さらに2本の名木を解除するとの諮問が出されました。

1本は、石神井台にある三宝寺のアカマツ。江戸時代、徳川家光が鷹狩で訪れた際にもあったとされる樹齢400年超の木でした。今年に入り大枝が大きく折れ、倒木の危険があるとのことで伐採が決まりました。

(出典:練馬区)

もう1本は、16代にわたり続く農家の敷地にあったケヤキ。いつからそこにあったのか分からないほどの歴史をもつ木で、こちらも腐朽により倒木の可能性があるとして解除に。

(出典:練馬区)

これにより、現在の「ねりまの名木」は78本となりました。

制度開始から30年、新たな指定はゼロ


名木がこれだけ減ってきた背景として、区の説明では地球温暖化の影響もあるのではないかとのことです。

練馬区の貴重な緑を守るために、まずは30年前に行われたのが最後となっている「ねりまの名木」の新たな発見、指定に区としても取り組むことや、木を守るために樹木医の診断の回数を増やすなど日ごろからのより丁寧な対応も必要だと思います。

“保護”されても消えている「保護樹木」―半数が解除


「ねりまの名木」以外にも、練馬区には「保護樹木」という制度があります。区民の皆さんが所有する木の中から、健全に育ち、周囲に悪影響がない木を区が「保護樹木」として登録し、守っていこうという制度です。

これまでに2,302本が登録されてきましたが、今も残っているのは約半数の1,203本つまり、半分近くが失われているということになります

理由は開発や老朽化など様々ですが、「保護されているはずの木が次々と消えている」という現実は、見過ごせません。

数百億円の新公園より、今ある緑を守ってほしい


練馬区は現在、新たな公園である稲荷山公園の整備に数百億円もの予算をかけようとしています。この整備では、400世帯以上の立ち退きも見込まれています。

しかしその一方で、相続などで減り続ける生産緑地の保全は進まず、区内に45か所ある「憩いの森」の維持費は、年間で1億円程度に留まっています。

地球温暖化が進む中で、巨額の税金をかけて新たな公園を作るより、練馬区にある貴重な緑を守ることに予算をかけることのほうが大事なのではないでしょうか。

皆さんのご意見やご感想も、ぜひお聞かせください。

これまでの訴えはこちらをご覧ください。