9月10日の一般質問では、全国的に問題になっている保育園でのスキマバイトについて、練馬区の状況を質問しました。保育園でのスキマバイトの問題は各種メディアでも報じられています。参考として読売新聞の関連記事(2025年7月9日掲載)もご覧ください。
👉 読売新聞「保育現場で広がるスキマバイト」
■はじめに:保育園の人手不足と「スキマバイト」依存の拡大
全国的に保育士不足が深刻化。都内では本年1月時点の有効求人倍率1.1倍に対して、保育士では4.8倍と際立っています。
こうした中、全国の保育園で民間アプリを活用した「スキマバイト」の活用が拡大しています。私の調査を通じて区内でも複数の認可園でスキマバイトを活用していることを確認しました。業務の内容は着替えの補助や散歩など、子どもの命や安全にかかわるものも多く含まれています。保育士資格が必要ですが、事前の面談も無く当日に「保護者と同じように入口から入り、会社名をインターホンで名乗る」といった運用がされていて、犯罪に悪用される恐れもあります。
■国の位置づけ:「最低ライン」の通知
そもそも、保育士による性暴力が深刻化するなかで、国の指針で着替えなどは「初対面の人材に担わせない」ことが前提とされています。また、こども家庭庁は通知で、スポットワーク人材を保育士定数に充てること、1〜2日の短期雇用を長期的に繰り返すことも望ましくないと明確に示しています。ただし、この通知は地方自治法上の「技術的助言」に当たり、国が最低限の方向性を示したにすぎません。
👉子ども家庭庁の通知:保育所等におけるスポットワーク(いわゆるスキマバイト)により採用された保育士の扱いについて(通知)
■岩瀬の訴え➊ 実態調査の実施と着替えの補助などの禁止を!
しかし、区内には半年近くにわたって継続的に募集する園も存在、通知に反する運用が常態化しています。そこでまず、区内のすべての保育所等に対しスポットワークの利用に関する実態調査を行うべきです。
さらに、国はスポットワークの運用を“望ましくない”としていますが、子ども達の安全を守ることを第一に、区はより厳格な基準を設け、スポットワーク人材の配置基準への参入を不可するとともに、着替えや排泄補助などの業務を禁止するよう求めました。
■練馬区の回答 「周知」と「注視」のみ...
区は、国の基準に基づき常勤保育士で確保することが原則であるとしたうえで、スポットワーク活用が一部で見受けられるため国通知を全施設へ周知し、巡回支援で留意点を助言していると答弁しました。また、今年度に国が実態調査を実施すると報道されていることから動向を注視するとしつつ、区独自の基準は設けず、活用実態の独自調査もしない方針を示しました。
■岩瀬の評価 区が対応せずにどうやって子どもを守るのか?
区は区内の保育園での活用実態の調査や独自基準の設定を拒否しましたが、残念ながら国の通知に反する運用が常態化しています。それを知っていながら放置するということは、子どもの安全を危険にさらすことでもあり、区として責任を放棄しているものです。区は改めて対応すべきです。
■岩瀬の訴え❷ 保育士の処遇改善を!
あわせて、保育士の改善についても訴えました。
そもそもなぜ保育士不足なのか。東京都で保育士登録者のうち就業しているのはわずか62%。7万人近くの潜在保育士が存在します。先月、練馬区が数年ぶりに実施した区立園の保育士募集には、10名程度の枠に54名が応募。条件さえ良ければ保育士は確保できるのです。
現在、多くの区で保育士への独自支援を行っています。例えば、千代田区、葛飾区、荒川区、足立区などでは、奨学金の返済費用を独自に補助、若手の採用、定着を後押ししています。また、練馬区が実施している宿舎借り上げについても、補助上限を国基準の8万2千円から独自に上乗せしている自治体も存在します。練馬区も他区の状況を参考に、さらなる支援を検討すべきです。区の回答を求めます。
■区の回答 引き続き取り組む
区では保育士等の就職相談や面接会を開催するなど、保育現場の人材確保を支援しているとのこと。またキャリアアップ補助金や宿舎借上げ支援事業補助金を活用した処遇改善にも取り組んでいると説明したうえで、人員体制についても、保育士や看護師等を国の基準に上乗せして配置し、財政的に支援しているとのことでした。そのうえで、引き続き事業者の意見を伺いながら人材確保の支援に取り組むと回答しました。
■岩瀬の評価 ならば早急な対応を!
区は事業者の意見を聞いて支援に取り組むとのことですが、それならば私の提案したような、奨学金の返済支援や宿舎借り上げの独自上乗せなども行うべきです。
■最後に
子どもの最善の利益を実現するためには、保育士の働きやすい労働環境の確保が不可欠。配置基準の変更もふくめ、区の更なる対応を今後も求めます。
ご意見などぜひお寄せください。過去の訴えはこちらをご覧ください。