昨夜(現地時間1月3日)、米国がベネズエラに対して軍事作戦を実施し、ニコラス・マドゥロ大統領らを拘束したと報じられました。私自身、南米での暮らしが長くベネズエラ人の友人もいる中で、とても心配してニュースを見ていました。

ベネズエラ政府はこれを「軍事侵略」と非難し、国連安保理も協議に入る見通しです。武力で他国の大統領を拘束する。もちろん、今回の武力行使は自衛のためでも国連決議に基づくものでもなんでもない。アメリカが掲げてきた自由や民主主義そのものを根幹から揺るがすもので厳しく非難されるべきです。

米国側は今回の作戦を「麻薬戦争(フェンタニル対策)」の一環だと位置づけています。しかし、フェンタニルは圧倒的多くがメキシコで生産されていて、原料となる前駆物質は中国やインドから調達されているとのこと。

“大半は合法的な入国港を通じて米国に流入しており、それを担っているのもほとんどが米国人だ。米国のリバタリアン系シンクタンク、ケイトー研究所が政府データを調査したところ、米国で2024年にフェンタニル関連で有罪判決を受けた被告の5人に4人(8割超)は米国市民だった。”

https://forbesjapan.com/articles/detail/88570

仮に問題がフェンタニルだとしても、なぜ「ベネズエラへの武力行使」が正当化されるのでしょうか?
国連憲章は、国際関係における武力による威嚇・武力行使を原則として禁じています。例外は大きく「安保理の授権」または「武力攻撃が発生した場合の自衛権(および集団的自衛権)」に、限定されます。 そして、麻薬取引やギャング犯罪は「刑事犯罪」であり、武力行使を正当化する“武力攻撃”の水準に達しない、というのが多くの専門家の意見です。

ここで象徴的なのが、バーニー・サンダース上院議員の声明です(以下、英語原文と対訳)。

“The President of the United States does NOT have the right to unilaterally take this country to war, even against a corrupt and brutal dictator.”
Senator Bernie Sanders

https://x.com/alexnitzberg/status/2007512199971962979?s=20

【対訳】「米国大統領には、たとえ腐敗し残虐な独裁者が相手であっても、独断でこの国を戦争に導く権利はありません。」

マドゥロ政権は独裁的で経済危機も相まってベネズエラからはここ何年も世界最多レベルの難民が流出していたことは確かです。マドゥロ大統領のアメリカによる誘拐を喜ぶベネズエラ国民やベネズエラ難民もいるという報道もあります(もちろんベネズエラ市民がアメリカの武力行使を糾弾している様子も報道されています)。しかし、これは違法な武力行使を正当化しません。

「敵が悪いから何でも許される」という論理が通ってしまえば、法の支配も、民主主義もいとも簡単に崩れます。

加えて深刻なのは、米大統領が作戦後に、ベネズエラを当面「運営する」といった趣旨の発言をしたと報じられている点です。 ベネズエラは世界最大級の確認埋蔵量を持つとされ、資源をめぐる思惑が疑われても仕方がありません。

ニューヨーク市のゾーラン・マムダニ市長も、次のように述べています。

“Unilaterally attacking a sovereign nation is an act of war and a violation of federal and international law.”
New York City Mayor Zohran Mamdani

https://x.com/ABC/status/2007531465832116486?s=20

【対訳】「主権国家を一方的に攻撃することは戦争行為であり、国内法および国際法への違反です。」

今回の件は「遠い国の話」ではありません。こうした行為が正当化されてしまうと、力が強いものが正当化される社会、法の支配や民主主義全体が脅かされる社会でいいということになってしまいます。
だからこそ、日本は態度を曖昧にするのではなく、人権や民主主義を前面に掲げて、懸念と抗議の意思を示すべきだと思います。