第三回定例会の初日(9月5日)、区長の所信表明で、練馬区立美術館の建て替えについて、区が予定してきた工期では事業者確保の見通しが立たず、本体工事契約が不調となるリスクが極めて高いとして、来年度の着工を見送る方針が明らかになりました。計画当初から中止・見直しを求めてきた私たちの訴えが遂に実現したことは評価します。他方で、より早い段階で中止や見直しを決断していれば、財政や区民生活への影響は格段に小さくできたはずです。

区長の発言は以下の通りです。

美術館・貫井図書館の再整備

 美術館・貫井図書館の再整備については、コンストラクションマネジメントを実施しています。その一環として行った建設業界へのヒアリング調査等では、施工が容易で、かつ利益率が高い事務所やマンションなどを優先的に受注する傾向がこれまで以上に強まっていることが示されました。区が予定している工期では事業者確保の見通しが立たず、本体工事契約の不調リスクが極めて高いとされています。これを受け、来年度の着工は見送ることとしました。
区民の皆様とともに作り上げてきた美術館・貫井図書館の再整備計画は、区民生活をより豊かにする上で欠かせないものであり、その方針に変更はありません。実現に向け、引き続き建設市場の動向を注視しながら、適切に判断してまいります。
なお、関連する経費は現在編成を進めている補正予算案として提案する予定です。

所信表明の全文は練馬区公式サイトに掲載されています(令和7年第三回定例会 区長所信表明)。

■延期しても募金は継続?

まず、今回の公表はあまりに遅すぎます。区は機運醸成を目的として、8月末に区役所アトリウムで展示を行い、8月1日号の区報では建て替えの特集を組みました。2029年度の建て替えを目指した寄付募集も継続され、既に200万円が集まっています。延期が決まった後も、こうして募金を続けているのは区民の信頼を損なう対応と言わざるを得ません。

■これまでにいくらかかったのか?

区はこれまで建て替えに関連してどれだけの費用を支出したのか、区民に明らかにする必要があります。延期に伴い、設計・広報・仮設や保全などで新たな費用が発生するおそれもあります。費用の全体像を速やかに公開することを求めます。

■方針は「延期」ではなく「白紙」に!

区は「方針は変えず、市場の動向を注視しながら適切に判断する」としています。しかし、先行きが見えないなかで建て替え方針を維持し続けることは、区民の不安と負担を長期化させます。いったん方針を白紙に戻し、基本構想でも課題とされたバリアフリー化の遅れを直視して、現行施設の計画的な改修と機能強化に舵を切るべきです。

■「美術のまち構想」の前提を見直しを!

本年3月には、美術館建て替えを前提に中村橋駅周辺の「美術のまち構想」が策定され、9月には子どもたちのまち歩きワークショップも予定されています。しかし、前提となる建て替えが不透明な以上、現時点の計画では実効性が期待しづらい状況です。既存の美術館を継続利用することを軸に、現実的で持続可能な構想へ全面的に見直すべきです。

9月10日の一般質問でも、計画の延期ではなく中止を求めます。ぜひ皆さんからのご意見もお聞かせ頂けたら幸いです!これまでに訴えはこちらをご覧ください。