先日の一般質問で練馬区の自民党議員が、渋谷区の同性パートナーシップ条例や世田谷区のパートナーシップ証明書に対して批判的な質問を行いました。

私自身は、9月の一般質問で性的マイノリティの人権擁護について訴えていたので、その内容には驚きました。(⇒記事を読む

先日の発言は本日の東京新聞の記事「渋谷区条例「日本の価値観否定」 練馬区議が議会で批判でも取り上げられ、反響をよんでいます。

数日後に練馬区議会の公式サイトでも公開されますが、まずは昨日の一般質問の内容について、本日、私が録音から書き起こした内容をご紹介します。
私の感想については、改めて記載させていただきます。

※ただし、こちらはあくまでも私が書き起こしたものですので、公式版ではなく、不明な点や聞き間違いなどがあることもご理解ください。区からの答弁も後半部に記載しています。

(■は不明な箇所です。)
「次に、この4月から渋谷区で施行された条例『渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例』に関してお伺いをいたします。
ここで取り上げるのは渋谷区に続いて、世田谷区においても条例とはいかないまでも、区長権限においてパートナーシップ宣誓書を受け取る仕組みをつくるというように、流行好きのマスコミが煽るなか他の自治体においても区民を混乱に陥らせかねない動向が見えるからであります。

渋谷区のこの条例は、性的少数者、LGBTの人権尊重をうたい、この(件)に関して、区・区民・事業者の責務を規定、それを推進会議を設置して施策をすすめると共に、禁止事項や相談窓口を設け、違法行為に対する勧告に従わない場合は関係者の氏名などを公表するという制裁規定まで設けたものであります。

この条例の制定に関しては、その制定の有り方において問題点が指摘され、またその中身において憲法24条と94条に抵触しかねないとする見解が法学者からも出されており、多くの問題を孕んだものと考えられます。まず、その制定過程は伝えられるところでは渋谷区が条例案を3月区議会へ提出すると発表したのは5月12日、ところがその前に、内容が報道機関にもらされ同日朝には報道されていたようです。委員会での事前説明などは一切なく、まさに議会軽視。渋谷区議会自民党の木村幹事長の表現を借りるならば、「議会に何の報告も無い、これでは行政への議会へのテロではないか」というものでした。

その裏では、区は昨年7月に弁護士や有識者など8名からなる検討会を設置、それも推進派のみで構成した会で、9回にわたり、9回にわたり検討を重ねていたのです。しかし、議会の委員会に対する検討会に関する詳しい説明は一切なかったそうです。さらに問題なのは、この間、条例案が区民にも非公開とされ、制裁規定まで設けていながら区民の意見を聞くパブリックコメントも行われないままでした。
普段は憲法違反や、民主主義のルール違反については敏感に反応する政党会派が、採決で反対しなかったのは不思議なくらいであります。いかに、性的少数者の人権や多様性を尊重する社会の実現という(未明)があるとは言え、行政の独断にブレーキをかける役割を放棄するならば、議員の責務を放棄したと言われても仕方のないことだと思われます。

そこでまず、お伺いいたします。渋谷区ですすめられたそのような条例制定のプロセスを、区長はどのようにお感じでしょうか、お示しください。

次にその、中身であります。
一般的な考え方として、民法における婚姻の規定を見ますと、東大の大村敦志教授の著書『家族法(有斐閣、2004年)』では「民法は、婚姻の当事者は性別を異にすることを前提にしている。同性では子どもが生まれないので、同性カップルの共同生活は婚姻とはいえないということだろう。民法典の起草者は書くまでもない当然のことと考えていたので、明文の規定は置かれていない。しかし、あえていえば、憲法24条の「両性の合意」という表現、あるいは民法731条の「男は・・・、女は・・・」という表現や民法750条以下の「夫婦」という文言に、このことは示されているといえる。」と明確に示しておられます。つまり、婚姻はつぎの世代を産み育てる人的な関係だからこそ、子どもの福祉を考えて特別に保護していると言えます。

しかし、今回の条例は端的に表現すると同性愛に基づくカップルを結婚に相当する関係と認め、パートナーシップ証明書を発行するというものです。もちろん、同性のカップルからは子どもは産まれません。その発想の根拠となったのが同渋谷区長である長谷部健氏が区議会議員時代に行った3年前の質問、区在住のLGBTの方にパートナーとしての証明書を発行してあげてはどうか、とあたかも渋谷区では性的少数者が虐げられているかのように質問したことに由来します。

その理由としたのが、結婚式場での挙式や、病院での面会などが断られるケースを解決したいというものでした。

この条例の制定を置き土産に引退した桑原前区長の回答は、その時点では、性同一性障害者特例法、これは性別適合手術後に法的な性別の変更を求める法律でありますが、性同一性障害者特例法が2003年に成立したと紹介し、「パートナーシップ証明書の発行がいったいどういう意味をもつのか、自治事務の範囲内として考えることができるのか、研究する必要がある。」というものでした。ここまでは理解できるところであります。

性同一性障害者、トランスジェンダーは自己の性自認の障がいに苦しむ人たちであり、■国連法(国内法)にもあるように法的にも認知されているわけです。
しかし、自己の性的指向を現すLGB、レズビアン、ゲイ、バイセクシャルとは明確に区別されるべきものであります。ところが、それが(■制定された?) 今回の条例はその区別をあえてせずに、意図的な混同がなされています。

そして、事実認識においても問題があります。
性的少数者の権利が不当に侵害されている事実は日本においてはほぼないということであります。

法務省人権擁護局によれば、全国で認知される人権侵害は毎年5万件以上あります。そのうち、性的少数者に関する事件はごくわずかであります。
昨年一年間では、性同一性障害に関する事案が7件、LGBに関する事案は0件であります。

また、電通総研の2012年の調査では日本の同性愛の数は5%程度、人口を一億二千万人として、約600万人が該当します。それだけの数がありながら、全国で一件の人権侵害も報告されていないということは実は日本は同性愛を罪とみるキリスト教文化圏とは異なり、同性愛者に寛容な国ということでもあります。

また、出来上がったこの条例は、当初の説明である結婚式場での挙式やアパートの入居、また病院の面会をしやすくするといった個別的な範囲を超え、渋谷区の区民や事業者などすべてを対象とすることが決まっています。言い換えれば、渋谷区の学校に通学するもの、事業所に勤める人なども、すべて対象にはいっているわけです。例えば、第7条.2では事業者の責務を定め、「事業者は、男女平等と多様性を尊重する社会を推進するため、採用、待遇、昇進、賃金等における就業条件の整備において、この条例の趣旨を遵守しなければならない。」としています。つまり、事業者はこれら同性カップルに対して会社からの家族手当や住宅手当などを支給しなければならないわけです。そして、証明書を取得したカップルは、家族向け 区営住宅に申し込むことも出来るのです。

さらに問題は、第4条、または第8条にあります。
第4条の(3)、性的少数者の人権の尊重においては「(3)学校教育、生涯学習その他の教育の場において、性的少数者に対する理解を深め、当事者に対する具体的な対応を行うなどの取組がされること。」とあります。これは第8条、禁止行為に「何人も、区が実施する男女平等と多様性を尊重する社会を推進する施策を不当に妨げる行為をしてはならない。」とする規定や、(■施策、持続)する上での「区、区民及び事業者は、性別による固定的な役割分担の意識を助長し、若しくはこれを是認させる行為又は性的少数者を差別する行為をしてはならない。」と共に、伝統的価値観でもある男らしさ、女らしさ、男女による結婚を尊重し、祝福する日本社会の価値観を否定するだけでなく、教育の場にまで介入したことで、家庭をも巻き込んで子どもたちの価値観をも混乱に落としかねない、非常に危ういものと断じざるを得ません。さらに言うならば、「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」とする憲法19条の趣旨に反するものと言わざるを得ません。

渋谷区は、憲法が定める婚姻と全く別の制度、「パートナーシップ証明書に法的拘束力はなく、婚姻制度とは別の制度」と逃げをうっていますが、これに準ずる制度である以上、憲法との整合性をまずは図らねばならないはずであり、明らかに一自治体ごとに完結するテーマではなく、国民的な議論を喚起したうえで展開すべきテーマであります。
憲法24条では、「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し」とする規定しかなく、そうである以上、渋谷区のこの条例は憲法94条の規定にある法律の範囲内で制定しなければならないものであります。よって、この条例はいくつかの点で条例制定権を逸脱したもの、と考えざるを得ないものであります。区長はこうした他区の動向に関してどのような認識、考えをお持ちでしょうか。率直にお答えください。

<区の答弁>
<総務部長>
私から渋谷区の男女平等および多様性を尊重する社会を推進する条例に関連するご質問にお答えいたします。

はじめに条例制定の手続きについてであります。新たな条例の制定につきましては、区議会、区民への十分な協議と説明が不可欠です。練馬区では条例制定に際しましては、適宜区議会への報告、相談を行うとともに、パブリックコメント等を通じ広く区民の意見を反映させて進めております。今後も適切な手続きを踏みながら事務執行に努めてまいります。次に他区の動向に対する区の認識についてです。

渋谷区のパートナーシップ証明、世田谷区のパートナシップ宣誓、などの取り組みについては、これらの区において、性的少数者の方々への配慮の一つとしてなされたものと認識しております。しかしながら、現実的な施策の効果が不明であること、また、現行法との整合性など、検証すべき課題があることなどから、練馬区ではこのような取り組みをする考えはありません。

性的少数者の方々は、周囲の誤解や偏見、無理解により、さまざまな困難に遭遇することがあります。また、ご自身の性のあり方について、知識や認識がないまま、成長された場合、他者の誤解や偏見と相まって、自己肯定感や自尊感情が形成されにくいこともあるといわれております。区では、まず、誤解や偏見を取り除き、性のあり方には様々な形があることなどを広く区民に周知するための啓発が重要であると考えます。引き続き区民への周知、啓発、および当事者への相談窓口などの情報提供などに取り組んでまいります。