視察最終日、福岡市のこども総合相談センターを訪問。

同センターは子どもの虐待に関わるすべての問題に総合的、一元的に対応していて、弁護士も常駐しています。虐待の相談から子どもの一時保護、さらにその後のケアまで総合的に一か所で担っている機関は少なく、全国の自治体が視察に来ています。

最初に子どもへの虐待の現状について伺いました。センターへの虐待相談数は増加傾向にあり、平成26年度は過去最高の718件となっています。内訳は1)放置的虐待(ネグレクト)(39%)2) 身体的虐待(33%)、3) 心理的虐待(27%)、4) 性的虐待(2%)です。
加害者は、実母が最も多く66%、次いで実父が22%となっています。継父は5%程度ですが、重篤な虐待を行うのは継父が最も多い状況です。

こうした状況を踏まえ、センターが抱える課題、対応について話を伺いました。

1. 赤ちゃんの泣き声による通報について

近年、最も多い通報が赤ちゃんの泣き声によるもの、いわゆる「泣き声通告」です。センターでは通報を受けた場合、すべての家庭を48時間以内に訪問し、虐待の実態を把握することになっています。ただ、泣き声通告の場合、そのほとんどはまず問題ないもので、児童相談所からの訪問はかえって親の育児不安を高めてしまうこともあります。
例えば、訪問したことで、周囲の住民から虐待していると思われたとショックを受けてしまい、子どもが泣き出したら口に布を入れてしまうとか、外にでるのを怖がるようになる、といったケースもありました。

そのため、センターでは保護者への支援的アプローチを強めるために、民間NPOへの委託による「子育て見守り訪問員」を派遣することにしました。これによって、児童相談所職員の訪問より、受け入れる保護者への負担が軽減されると共に、児童相談所職員がより重篤なケースに集中することができるようになったとのことです。

2. 虐待を受けた児童の保護について

虐待の恐れが高い児童に対する強制保護、平成26年度は約80件に達しています。欧米では強制保護は裁判所の決定ですが、日本では行政処分として行っています。強制保護、本人も親も虐待を否定する場合は非常に難しいとのことです。

一例として、性的虐待を受けている中学生の女の子のケース。本人も親も虐待を否定。しかし、虐待の可能性が非常に高いと判断し、強制保護を実施。最初の数か月、本人は家に帰りたい、と話していましたが、9カ月後、ようやく親からの虐待があったことを認めたそうです。

市ではこうした事態に対処すべく、法医学専門家との連携と弁護士の採用を開始しました。
法医学専門家は、虐待の恐れのある子どもを実際に診察しています。例えば、子どもの体にあざがあった場合、それが友達同士で行われたものか、大人によってつけられたものか判断し、また、赤ちゃんの揺さぶりについても専門的に判断を行っています。同様に、子どもの利益を守る法的枠組みをしっかりと提示し、職員にアドバイスするために弁護士を採用しました。

3. 虐待をなくすために必要な事

虐待が増加した背景は1.貧困、2.ひとり親の増加、3.親の心身疾患、4.地域の繋がりの希薄化があるとのこと。特に、強制保護の内訳は7割が片親家庭とのことでした。
こうした中、虐待をなくすために必要な事は、親と子だけの問題として捉えるのではなく、地域としてどうやって支えていくか、ということでした。

私も以前は、子どもに虐待をする親の気持ちなど想像もできませんでした。しかし、実際に子どもができ、毎晩夜泣きをし、ご飯も食べずに一生懸命つくった離乳食はぶちまけられ、睡眠不足でオムツを代えたと思ったらまたうんち・・・という日々を重ねるにつけ、虐待をしてしまう親御さんの気持ちもなんとなくわかるようになり、彼らを一方的に責められない、そう思うようになりました。私の場合は家族がいて、近所には付き合いが深くなんでも相談できるパパ友・ママ友たちもいる。しかし、子ども(たち)と親一人で逃げ場の無い生活していたり、貧困から抜け出せなかったりでどうしても追いつめられてしまう、そんな状況もわかります。

だからこそ、虐待の問題については、家族だけの問題ではなく地域全体で取り組むことの重要性を認識しつつ、区政の中で、根本的な解決策をしっかりと考えていきたいと思います。