昨年まで、JICA等の専門家として途上国で活動をしてきた。
内戦が続くパキスタンやコンゴ民主共和国で仕事をしていた時、私が心がけていたこと、それは、敗戦後、日本がこれまで軍隊を持たず、どうやって復興してきたか、様々な課題がありながらも、曲がりなりにも、その前提には憲法9条があり、誰も殺さないことを基礎としてきたこと、それを紛争国の方に伝えることだった。
コンゴ民で働いていた時、元少年兵の方から、「日本では戦争をしなんて羨ましい」と言われたこと、今でも覚えている。その日本がこんな形で集団的自衛権を認めることになるなんて、本当に情けない。
そんな中、憲法とは何か、立憲主義とは何か、そして今後何ができるのか、考えたいという思いから、市民の声ねりま運営委員の二人の弁護士、小林明隆さんと伊藤朝日太郎さん(明日の自由を守る若手弁護士の会)による委員への勉強会を実施した。
そもそも憲法では、「憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない」(98条)とあり、憲法違反の法律は、すべて無効であると明記されている。
だからこそ、私は安保関連法案が可決されても、この条文がある限り、裁判所が違憲判決を出せば、すぐに廃案にすることができるのではないか。そこに希望を見出す人も多いと思う。
現在安保関連法について、憲法学者などが「憲法9条に違反する」として今後、集団で国に対す訴訟を起こすことにしているようだ。しかし、講師によれば、これは簡単ではないという。日本では、そもそも法律が違憲かを判断する憲法裁判所は存在しない。だから、違憲かを問うには通常の裁判所に訴える必要がある。そして、そのためには、基本的には、ある法律が憲法に違反する、ということではなく、ある具体的な事件があって、それを規制する法律が憲法に違反している、ということを訴えなければいけないからだ。
さらに、それが受理されたとしても、裁判所が必ずしも、法律の違憲性を判断するかは不明とのこと。例えば、安保条約や自衛隊の合憲性について、「高度に政治的な判断を要する」という理由でこれまでも裁判所は判断を避けている。つまり、今回の安保関連法については、判断自体を避ける可能性もある。
驚く参加者も多かった。憲法に違反していることが明白であるにもかかわらず、それに対して司法は何もできないかも知れないなんて。だとしたら、政権はどんな法律でも作ることが出来てしまう。三権分立って、なんだ?と思うのも無理はない。
そこで皆で出した結論。それは、誰かに任せるのではなく、結局は自分たちでしっかりと行動しなければいけないということ。私たち一人一人が、次の選挙で、安保関連法に賛成した議員を落選させて、この法案を廃止しなければならないということ。そのためには野党の共闘が不可欠だ。
今日は息子の誕生日だった。同時に、日本の立憲主義の礎が根本から揺るがされた日。息子や孫の世代に、どんな日本や世界が残せるか、しばし暗澹たる気持ちになるが、前を向かなければいけない。絶対にこの法律が廃止となるよう、声を挙げ続ける。