7月20日の文教児童青少年委員会では「練馬区立図書館ビジョン」の項目別取組状況が報告されました。同ビジョンは2013年6月に練馬区の10年間の図書館運営の基本理念やサービスの方向性を示すことを目的に策定され、これを継承する形で昨年11月「これからの図書館構想」が完成。委員会では図書館ビジョンからこれからの図書館構想へとどのように継承されたのか報告がありました。私からは「これからの図書館構想」の問題を指摘しました。

1.図書館は何のためにあるの?

「これからの図書館構想」では、練馬区が描く30年後の姿、「みどりに恵まれた良好な環境の中で誰もが暮らしを楽しむ成熟都市」ねりまの実現に向け、図書館が世界につながる彩り豊かな知の情報拠点となることが目的とされています。

しかし、図書館は何のためにあるのでしょうか?1979年の「図書館の自由に関する宣言」では「図書館は基本的人権の一つとして知る自由を持つ国民に、資料と施設を提供することをもっとも重要な任務とする。」としたうえで、「図書館の自由が侵されるとき、われわれは団結して、あくまでも自由を守る。」と宣言しています。また、2022年の「ユネスコ公共図書館宣言」では、「公共図書館が教育、文化、社会的包摂、情報の活力であり、持続可能な開発のために、そしてすべての個人の心のなかに平和と精神的な幸福を達成するための必須の機関である、というユネスコの信念を表明するものである。」と謳っています。つまり、図書館は私たちが生きていくうえで欠くことのできない存在であり、だからこそその価値を高める必要があるのであって、区長が掲げる理想の実現のためではありません。

練馬区は、「区民の知的探求心に応え」といった表現のなかに、単に貸本屋ではない、高邁な施設としての思いも含めているとのこと。しかし構想の中でそのような思いを具体的に見ることはできません。

2.図書館の職員のことが一言も触れられていない。

今回の構想では、図書館の実務を担う働く職員のことが一言も触れられていません。
例えば、杉並区でも今年の3月に「杉並区立図書館サービス基本方針」が策定されています。その中で「学びの場としての図書館では、豊富な資料の知識と情報探索能力を有する専門性の高い司書の確保とその資質向上を図っていく必要がある」とその重要性を明記しています。

練馬区は、構想はサービスの今後の方向性を示すものであり運営体制や職員の待遇などは本構想とは別の所で検討しているとのことです。練馬区は前回の委員会で、図書館の職員が最低賃金で募集されていることを指摘した際に、金額は適正だと認識しているとの回答でした。構想の中で図書館の礎ともいえる職員のことを一言も触れないことは課題だと考えます。

3.内容が非常に包括的

これまでのビジョンでは子育て世帯や若者への具体的な支援が示されていましたが、図書館構想では「図書館の基本的機能」の「区民への読書活動支援」という形で集約されています。また、ビジョンで具体的な項目として示されたことが、全て4つのコンセプトとして集約されていて、あまりに包括的と言わざるを得ません。

ユネスコの宣言にあるように、図書館はすべての個人の心の中に平和と精神的な幸福を達成するための必須の機関です。今後の取組の中で、構想がどのように具体化されていくのか、注視していきます。