練馬区議会第三回定例会の中で議論された令和6年決算特別委員会では、地域文化費、教育費、全款補充質疑を担当しました。地域文化費では、外国ルーツの子どもに対する学校外での日本語支援の充実を訴えました。練馬区でも外国籍の子どもの数はわずか5年で1.5倍に急増しています。他方で、練馬区のこども日本語教室ではこれ以上人数を受け入れることが出来ない状況。日本語が話せないことで不登校になってしまう子どももいる中で、改善を求めました。

【はじめに】
練馬区は本年3月、長期計画である「第3次みどりの⾵吹くまちビジョン」を策定しています。そのなかで基礎的自治体として受入れ環境を整え「外国人に開かれた地域づくり」に努めると謳っています。

そうした中、区内で暮らす外国籍の子どもの数は、令和3年度、中学生相当で244名だったのが、令和5年度は306名とわずか3年で25%以上も増加。この5年で見ると1.5倍になっています。

外国籍の子どもへの日本語指導において、学校外で重要な役割を果たしているのが「こども日本語教室」で地域振興課が主催、日本語を話せない小中学生を対象に、毎週土曜日に実施しています。

訴え1.子ども日本語教室の拡大を!

しかし、事業開始から30年が経過する中で様々な問題が顕在化しています。
まず、日本語指導が必要な子どもも5年で1.5倍も増えているにもかかわらず、子ども日本語教室の参加者はこの5年で85名から86名へと、1名しか増えていません。その理由は、既に会場で受入れられる人数の上限に達しているからです。現在も9名がキャンセル待ちになっています。また、現在の会場は区役所本庁舎のみ、大泉や石神井など区内西部で暮らす、低学年の子ども達には、毎回、家族等による付き添いが必要です。

30年前と同じやり方で現在のニーズを満たすことはもはや不可能です。だからこそ、区内西部に新たな教室を開設して、全ての希望する子ども達が無理をすることなく受講できるような体制を整えるべきです。

区の回答

今後も外国からの転入の増加が見込まれるため、今年度は指導者の養成講座を実施して、指導者の増員を図っています。引き続き教育委員会と協力しながら、日本語学習の場の充実を検討します。

岩瀬の意見

9名がキャンセル待ちとのことですが、実際にはキャンセル待ちと聞いて登録を諦めた方、距離的な問題から参加を断念した方を含めて、潜在的な希望者は非常に多いと考えます。ぜひ、前向きな対応を求めます。

2.子ども日本語教室のボランティア、報酬はわずか1000円!

子ども日本語教室については場所の拡大と共にボランティア講師の確保も不可欠です。令和元年度、85名の生徒に対して指導を行うボランティア講師は60名でしたが、令和5年度、86名の生徒に対して、ボランティアは35名まで半減しています。

活動する講師に伺うと、年齢も日本語の習得度にも大きな差がある中、本来は1対1の指導が望ましいものの、人手が足りないため、複数を同時に教えざるを得ない状況もあるとのことです。

区は日本語講師の養成を行うとしていますが、優先すべきは講師の定員拡充よりも待遇の改善です。子ども日本語教室、報酬はなんと1日で1,000円のみ、しかも現金ではなく地域振興券で配布。ボランティアの方、準備にかかる時間なども換算すると、時給300円分にもなりません。

持続可能な制度とするために、またわずか1000円で毎週責任を持って子ども達と向き合うボランティアの方々に感謝を込めて、少なくとも交通費や最低賃金を保障すべきです。

区の回答

ボランティアの方には頭が下がる思いです。ボランティアの方々のお気持ちを大切にし、せめてものお礼ということで共通商品券を渡しています。引き続き、ボランティアの方々のご意見、お力添えを頂きながら実施していきます。

岩瀬の意見

もちろん区民の善意や好意に基づく活動が重要なことは否定しません。しかし一方で、これでは続けられないといって登録はしているものの、辞めてしまった方、活動を諦めた方の声にも向き合うべきです。現状では「やりがい搾取」と言われても仕方がない状況です。

3.地域振興課と教育委員会の連携を

子ども日本語教室では、地域振興課と教育委員会の連携強化も必要である。ボランティアの方からは子どもたちの学校での様子、日本語指導の状況がわからず、何を教えればいいのか戸惑う声も届いている。地域振興課と教育委員会で一定の情報を共有できるような仕組みを検討すべきです。

4.未就学児を対象とした日本語教室を

入学前の未就学児への日本語指導も課題になっています。
東京都の調査によると、今年度、未就学児に対する取り組みを実施している自治体は都内全域でわずか27%、練馬区も未実施です。

江戸川区では「入学前にほんご広場」を開設、小学校を活用して2月~3月にかけて実施。新宿区でも、日本語サポート指導員が区立幼稚園を訪問して日本語指導を行っています。練馬区も他区の取組を参考にしながら未就学児への日本語指導に向けた取組を開始すべきです。

区の回答

未就学児を持つ外国人から年に数件ほど問い合わせは頂いています。未就学児の日本語指導については他自治体の取組状況、そして効果等を注視します。

4.「多文化キッズサロン」の設置を!

外国籍の子どもやその家族が抱えている課題は言語だけでなく、多くの人と繋がる居場所や困りごとの相談など多岐にわたります。東京都は2023年度から各自治体での「多文化キッズサロン」の設置を促している。同サロンは「日本語を母語としない子ども」が安心して過ごすことができる地域の居場所であり「学習」「相談」、「交流」を提供して、地域で一体的な支援を行うことを目的としています。都内でも目黒区や西東京市、八王子市で既に設置し、杉並区などでも検討を開始している。練馬区でもぜひ設置に向けた検討を行うべきです!

区の回答

区が実施している子ども日本語教室では、日本語学習だけでなく、交流会なども実施しています。また、支援が必要なご家庭がわかった場合は必要な機関をご案内し、連携しながら支援しています。引き続き、様々な機関と協力しながら取り組んでいきます。

岩瀬の意見

子ども日本語教室を否定するものではありません。他方で、現在、子ども日本語教室に同じ子どもが長年にわたって参加している現状がある。その大きな理由が、地域の方や同じ境遇の仲間との繋がりを求めているからです。練馬区は今後、こうした児童の卒業を促すとしていますが、その子ども達の居場所を作るべきです。

練馬区に暮らす全ての子ども達が、国籍を問わず、適切な支援を受けられることを求めて訴えを終わります。