練馬区は、中学校の適切と考える規模について、全国で最も厳しい基準を設けています。小規模校のデメリットを強調する一方、改善するための取組は行っていません。2月28日の予算委員会の質疑では今回の計画策定に際しては、豊渓中学校の生徒や保護者、住民の合意形成はおろか、事前の連絡や相談すらも行っていなかったことも判明しました。

練馬区の基準、全国の6割の中学校が過小規模に

練馬区は中学校について、適切とされる規模(適正規模)を12学級~18学級を適正規模としたうえで、11学級以下を独自に「過小規模校」と判断しています。12学級を満たすには1学年で最低で4学級を維持しなければなりません。

(出典:区立学校適正配置第二次実施計画(素案)

過小規模校について「人間関係が固定しやすく多様なものの見方・考え方に触れる機会が少なくなる、等のデメリットの影響が大きくなり、学校運営に大きな課題が生じる事が懸念される」として統廃合の検討の対象としています。

(出典:同上)

しかし、これは本当なのでしょうか?文部科学省が実施した「令和3年度 学校規模の適正化及び少子化に対応した学校教育の充実策に関する実態調査」によると、全国の9千を超える中学校のうち、60%以上の学校が11学級以下であり、練馬区の定義する過小規模(区内でも44%の学校)に該当します。

(出典:令和3年度 学校規模の適正化及び少子化に対応した学校教育の充実策に関する実態調査)

つまり練馬区は、全国の6割以上の中学校に対して、「多様なものの見方・考え方に触れる機会が少ない」と判断しているわけであり、全く実態にそぐわないものです。

練馬区は全国で最も厳しい基準で適切な規模を判断

令和5年度の調査では、適正規模に関する全国の自治体の考え方も明らかにしています。学級数を統廃合の判断の基準としているのは、全国の自治体の中でも13%、そのなかで12学級以下を標準以下とみなすのは34%(2%+19%+13%)です。つまり、12学級以下を統廃合の対象としているのは、全治自体のわずか1.5%(0.13×0.34)に過ぎず、練馬区は全国でも最も厳しい基準で統廃合の対象を判断しています。77%の自治体は基準自体を設けていません。

(出典:令和5年度 学校規模の適正化及び少子化に対応した学校教育の充実策に関する実態調査)

練馬区は適正規模の基準を、「学校教育法施行規則」に則って決めたと説明しています。

(出典:区立学校適正配置第二次実施計画(素案))

しかし文科省は、公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引の中で「この標準は「特別の事情があるときはこの限りでない」というあくまで弾力的なものとなっていることに留意が必要」としています。

(出典:公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引)

だからこそ全国の8割近くの自治体は、そもそも基準すら設けていません。練馬区も地域の実態を反映して学級数を基準とすること自体、見直すとともに、豊渓中学校の統廃合の計画を撤回すべきです。

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