妻の友人に赤ちゃんが生まれた。

なにやら盛り上がって電話で話している。話のテーマはただひとつ、どうやったら母乳量が増えるか。電話の相手は相当悩んでいるらしい。

現在8か月の息子が生まれた後しばらくして知ったことだが、母乳をめぐるママの悩みは本当に深い。育児初期の悩みのダントツトップといっても過言ではないかもしれない。

多くの男は、生まれたての赤ちゃんが吸えば勝手にぴゅーっ、と出てくる「フリー・ドリンク」と勘違いしているが、とんでもない。最初からたっぷり出てくる女性はむしろ少数派らしい。実は、母乳はものすごい初期投資と、その後のメンテナンスが必要な飲み物だ。赤ちゃんに必要な量を「生産」できるようにするには、初期の段階で、お母さんは頻回に授乳しないといけない。多くて一日12~3回。一回の授乳に15分~20分かかるとして、単純計算でも最大4時間ちかくは授乳に費やすことになる。

ミルクを足したりしていると何時間か上乗せ、だ。これで母乳量が安定するのは100日くらいかかるし、その後も回数が減ると直ちに母乳量が減ってしまう人も多いときく。母乳が出ない自分を責め、「母乳ノイローゼ」とも言えるような状態になる女性も多いらしい(注:母乳の利点は多いが、何事もバランスが大事で、こだわりすぎはよくないと思う。私自身は文明の利器・粉ミルクももちろん、活用したらいいと思っているし、お母さんにとって楽で、子どもが健康なら、最終的にはどっちでもいいのだ)。

しかも、母乳にどんどんとられてしまうのでママは水分と炭水化物等を普段の倍以上(!)とる必要があり、休息も必須だ。しかし、例えば妻を見てみても、8か月経つ今でも、私のいない時は「抱っこひもして、伸びてくる子どもの手をよけながら立ち食い」の日々。

おむつ変えをはじめとした赤ちゃんの世話をしながら家事もしなければいけないとなると、ご飯を2膳分食べるのは時間が許さず、出産前よりも数キロ痩せてしまって心配だ。多くの男性は、「僕が外で働いてる間中、赤ちゃんと一緒に『ごろごろ』(沿い寝沿い乳してるとそう見える)していいな」とか思っているかもしれない(私も最初思ってました、スミマセン)。とんでもない、かなり忙しく、肉体的に(時に、精神的にも)キツイのだ。しかも、授乳している間はアルコールだけでなくカフェインも砂糖や油分(乳腺がつまるの防止)も過度な摂取は避けるべしというのだから、多くのママはホッと一息もままならないと感じてしまう。

多くの男性は家に帰ると、やれやれ・・・とどっかり座って食事を出してもらうのを待ってしまうが、そこはぐっと抑えて、まず牛乳の一杯でも飲んで、自分が子どもを抱いて、へとへとでお腹が空いているであろう奥さんに真っ先に食べてもらうべきなのだ。奥さんを労わるという意味だけではない。

母乳は赤ちゃんの免疫を高める最良の栄養源と言われる。また、災害時、粉ミルクは清潔な水が無いとだめだが、母乳ならその点は安全だ(これは、衛生状態の非常に悪い途上国勤務が多かった私は実感を込めて言える。ただし、今度は母親の心身の健康が必要)。

飲み残しを捨てなくてもいいし、経済的でもある。最初の投資が終われば、どこでもいつでもあげられるだけに、お母さんにとって楽だ。男性はもっと、母乳のしくみについて知識を深めて、ママと協力するべし(余談だが、寄り添うつもりで「母乳、出てる?」等と聞きすぎると、妻によると女性にはプレッシャーで逆効果のこともあるそう。十分なコミュニケーションが必要)。

このように、母乳活動の内容と大変さは、両親教室や父子健康手帳(一部の自治体で配布)等のなかで、現在すっぽりと抜けているように思う。必須の内容として盛り込むべきだ。自戒を込めて。