各地での児童虐待が深刻化するなか、これまで都しか設置できなかった児童相談所が区でも開設できるようになりました。そんな中、23区で唯一、児童相談所(児相)の設置に反対しているのが練馬区です。

江戸川区、荒川区、世田谷区では来年度からの開設に向けて準備が進んでいます。今回は会派で江戸川区を視察しました。担当の部長、課長から話を伺うなかで、開設に向けてどんな困難があっても児相を開設し、江戸川区での虐待を無くす、という強い決意を感じました。そして、背景には平成22年に区内で発生した7歳の児童が虐待死した痛ましい事件があるということでした。

課長が繰り返したのが、区が児相を持つことで虐待の「予防」と「介入」を一元的に行うことができる。指揮命令系統が一元化されることで、支援対応も一元化される、ということのメリットでした。現在、児相が行っているのは虐待への対応であり、家庭への支援はすべて市区町村が実施している。その連携が取れていないことが問題の元凶の一つであり、学校、市区町村(子ども家庭支援センター)、児相で一元的に指揮系統をとるためにも児相の設置は不可欠とのことでした。

江戸川区では来年度の開設に向けて数億円をかけて新たな施設を建設しているほか、50人近くを新たに採用して、150人体制で対応しようとしています。また、これまでに38名を他の児相に派遣し、ノウハウを学んでいるとのことでした。

児相の設置には開設だけで(イニシャルコスト)数十億円、毎年の運営でも数十億円が必要になります。都との協議のなかで、財源(予算)をどうするかといった大きな問題も残っています。しかし、もし都から予算がもらえなくても、児童相談所は絶対に必要であり自分たち(区独自)の財源ででもやるべきだ、という強い主張が印象的でした。

練馬区は人材のことや、他の自治体との連携のこと、財源のことなどを理由に区としての児相の設置に反対しています。しかし、他の区では同じ課題を抱えながらも、それでも地域の子どもは地域で守るんだ、という強い意志で児相の開設を行おうとしています。区がやるべきことは、やれない理由を見つけることではなく、問題を見据えながらも、子どもたちを守るために江戸川区や他の区の姿勢から学び、児相設置に向けて動き出すことだと改めて思いました。写真は江戸川区が建設中の児童相談所の前で撮ったものです。