11月15日から16日にかけて、総合災害対策等特別委員会の視察。2日目の16日は長野県立美術館を訪問しました。こちらは現在進行中の練馬区立美術館の改修(建て替え)計画の参考ともなっています。https://nagano.art.museum/
同美術館は2017年にプロポーザル方式で事業者を選定、2020年に完成。総事業費は106億円、敷地面積は16,363㎡(練馬区の計画は4000㎡)、延べ床面積は13,202㎡(練馬区の計画は図書館込みで8,000㎡)と非常に大きな施設です。年間の来場者数は2021年度、78万人を超えています(総入館者数)。
同館の建設に際しては、住民の意見を反映するために事業者が決定してから合計で15回を超える意見交換会を実施、特に障害のある方々からの意見を反映させるために努めたとのこと。自分たちでも多目的かつ自由に利用できるスペースが必要との声も多く出る中で、設計も変更したとのことでした。
費用面に関しては、見積もりの際に比べて、実際にはそれよりも多くかかってしまうとの話、また、特に光熱費を中心に維持費が従前施設の倍以上かかっており、当初予算でも約6千万円を計上したものの、燃料費の高騰を受けて、さらに費用がかかっているといった課題も共有頂きました。
練馬区の美術館は、長野県立美術館に比べると、改修後でも敷地面積は4分の1、延べ床面積でも概ね6割程度です。入館者数も現在では長野県立美術館の1割程度ですが、それでも総事業費は見積もり段階で81億円にも達しています。現在の資材価格の高騰を踏まえると、それで収まるとはとても思えません。また、年間の維持費についても今の所は示されていませんが、莫大になることも予想されます。
住民参加に際しても、長野県立美術館では15回もの意見交換会を実施したとしていますが、練馬区では現在までのところ、パブリックコメントのみであり、そこで出た意見についても誠実に向き合おうとする姿勢は感じられません。
特に印象的だったのは、美術館を作る際の基本理念として、中心はあくまで作品であり、建物は突出することなく、風景の一部になるようにしたというもの。練馬区では現在、80億円以上をかけた建て替えを志向していますが、なぜそのような建物が必要なのでしょうか?そもそも区立美術館では何を中心に据えたいと思っているのでしょうか?今回訪問したのは県立の美術館であり、練馬区の区立美術館とはその位置づけや目的も異なります。地域の身近な美術館にも関わらず、住民の意見をほとんど聞かないまま、長野県立美術館と同規模の金額をかけるというのは決して望ましい姿ではありません。区としてもっと丁寧な対応を行うよう、今後も訴えていきます。