予算委員会の地域文化費ではわずか38年しか経過していない練馬区立美術館の建替えについて、総額が当初の81億円から100億円近くまで上昇していることバリアフリーを目的としながらもエスカレーターは上りしかついていない事区民向けのスペースが当初の提案より大きく減じていることなどを指摘し中止を求めました。

【はじめに】

2月19日の常任委員会で練馬区立美術館・貫井図書館改築等基本設計の概要が報告された。
今回示された基本設計と、これまで美術館基本構想や事業者のプロポーザルで示されていた内容には大きな違いがあった。

【1.概算工事費について】

最初に概算工事費について。プロポーザルの実施要項では解体を含む改築の概算工事費は上限額が76億、工事管理費などを含め総額81億円としていたが、基本設計では建築と解体に係わる費用だけで76.2億から89.8億へと13.6億円の増。さらに今回示された美術の森改修の1.5億、工事管理費の1.5億を加えると93億円、さらに物品購入費を当初見込みの4億円とすると総額で既に97億円に達し、当初の総額81億円から16億円もの増額となっている。

この間、費用が上がる可能性について幾度となく指摘してきたが、練馬区はその都度否定。令和5年7月の委員会においても「募集要項の中で、建築にかかる費用を、解体を含め概算工事76億円を上限として示した。」としたうえで、「近年の美術館の工事、建築の単価を参考にしており妥当な金額」と答弁している。

【質問:金額が上がることをいつ知ったのか?】

つまり、わずか5か月前の段階でも建築、解体にかかわる費用について、76億円を上限としていた。そこで質問する。区は具体的にいつ事業者から価格変更について相談や報告等を受けたのか。明確に答えよ。

★区の答弁

基本設計の完了と共に、概算工事費は最終的に示された。

【岩瀬の主張】

あまりに遅い。そもそも、事業者はプロポーザルにおいて、「物価上昇を見越したマネジメント」を約束していた。事業者の説明を引用すると「常に経済状況を把握・予測し、物価変動の厳しい時代に対応したコスト管理を行う。業務の初期段階に超概算をし、工事区分ごとに物価上昇に配慮した目標金額を明確にします。早い段階でサービスを決めることで後半の増額要素を無くす。」としていた。つまり、練馬区も事業者も物価上昇を見越したコスト管理が適切にできていなかった。

今回の価格上昇の背景として、昇降機の追加工事なども取り上げられているが、詳細を確認すると、昇降機による増額は2.3億。最も上昇したのは建築工事費である。当初は共通費、消費税込みで44.6億円だったのが、今回53.5億円と9億円近く上昇。その理由は工期が1年伸びたこと、法改正による週休2日制の導入、資材の高騰など全てわかっていたことである。

【質問:最終的にいくらになるか、議会に示せ】

これが原因であるならば、今後も価格が上昇するのは明らか。区は「現時点では想定できない」としている。多額の税金が使われる以上、今後も計画を進めたいのであれば、今の段階で上限額をしっかりと示したうえで、議会の判断を仰ぐべき。区の見解を求める。

★区の答弁

今後の金額については想定できない。

【岩瀬の主張】

財政の質疑の中でも、学校の建替えの費用がこれまで38億円程度だったのが、58億円(仮設を含めて)に跳ね上がったとの説明があった。今後も費用が上がることが想定されるなかで、貴重な区民の財産をいくらつぎ込もうとしているのか、明確に示すべきである。

【2.バリアフリーについて】

第二の論点がバリアフリー。今回、区が改修を必要とする理由の第一に挙げていたのが、「バリアフリー」だった。

基本設計では新たにエスカレーターが設置。理由について、地域文化部長は2月19日の常任委員会において、「当初想定がなかったが、プロポーザルの案から見て、非常に階段が多かった」と説明。

しかしこのエスカレーター、なぜか上りのみ。部長は答弁で、下りのエスカレーターを付けることもできたとする一方で、「色んな意味を考えた結果、展示や観覧の動線を考えた際にはこれでいきたい」と説明。そのうえで、「下りのエスカレーターについて、バリアフリーというよりも使いやすさを考えた」と答えている。つまりバリアフリーよりも展示や観覧の動線を優先したということである。

【質問:せめて上りエスカレーターもつけるべき】

そもそも建替えの目的はバリアフリーだったはず。その目的を失うのであれば、美術館の建替え自体が必要ないことに。どうしても建替えたいのであれば下りエスカレーターを設置すべき。

★区の答弁

その予定はない

【岩瀬の主張】

そもそも上りよりも下りの方が筋肉や膝、関節などへの負担が大きいのが医療界での常識。帰りはエレベーターというのであれば、なぜ上りのエスカレーターを付けるのか。基本構想の中で、「乳幼児から高齢者、障害者など誰もが鑑賞しやすい環境を作る」としている。バリアフリーよりも動線を優先するという区の姿勢を改めるよう求める。

【3.構造について】

構造についても大きな変化。美術館基本構想で「区⺠のアート活動への⽀援の充実」を掲げていたにも関わらず、基本設計では市民向けのスペースが当初案より大きく削られている。

【質問:なぜ区民向けのスペースを減じたのか】

特に多目的室は現在よりも拡大し300㎡を目安とすると区民にも説明していたが、基本設計は倉庫を含めて268㎡、使える面積はわずか200㎡に。利用者の方は非常にがっかりしている。さらに、目玉の一つでもあるサポーター室も基本構想の70㎡から半分以下の30㎡、区民のための創作室も150㎡から110㎡まで削っている。基本構想で理念を大きく示したにもかかわらず、なぜ区民用のスペースをこれほど減じたのか?

★区の答弁

面積は同じだが、より使い勝手のいい環境を整備する。

【岩瀬の主張】

費用が大きく上がった一方で、最初に描いていた区民への利便性も損なわれている。
今回の変更で唯一評価できるのは基本構想やプロポーザルで明記されていた、最上階にある「眺めの良く気持ちの良い執務環境」に隣接していた30㎡の館長の専用室が無くなったこと。

【岩瀬の思い】

既に100億に達しようとしており、今後いくらになるか想像もつかない中で、計画をやめるなら基本設計が完成した今の段階です。100億の予算があれば、どれだけ多くの事を実現できるか。経済的に困窮する大学生に対する返済不要の奨学金の創設や、子ども食堂への更なる支援、感震ブレーカーの全戸への配布、会計年度任用職員の待遇改善、教員の負担軽減、これこそが私達が来年度の予算で求めることです。今後も練馬区に訴えます!

これまでの訴えはこちらをご覧ください。