練馬区立美術館の建て替え計画について、人件費や原材料費の高騰により整備費(解体含む)が当初の76億円から1.5倍、109億円になることが明らかになりました。(新聞報道はこちらをご覧ください。)1月23日の令和7年度 (2025年度)練馬区 当初予算案 記者発表で区長が明らかにしたもので、あわせて整備費用や工期が妥当かを検証するコンストラクション・マネジメントを導入することを発表、令和10年度予定の開館が遅れる可能性も出てきました。今後も更なる費用の高騰が予想される中で計画を全面的に見直すべきです。
整備費が1.5倍に高騰
練馬区立美術館の建て替えについてはこれまでも価格の上昇や工期の延長が繰り返されてきました。当初の令和4年8月、練馬区が基本設計業務委託の受託事業者選定にむけて策定した実施要綱基本設計業務委託 特記事項 の中で、練馬区は解体を含む整備費用の概算として76億円程度を上限として設定していました。
しかし、わずか1年半後の令和6年2月、基本設計の概要が報告された段階で人件費や物価の高騰を理由に89億8千万円まで上昇することが報告されました。
(練馬区立美術館・貫井図書館 基本設計の概要)
さらに今回、109億円に変更され、僅か2年半で建て替え費用が76億円から1.5倍に急騰したことになります。この金額は美術館本体の解体と整備だけですので、美術の森緑地改修や工事管理費、物品購入費を含めると金額はさらに膨らみます。
工期についても、当初は令和9年度の開館を目標としていましたが、費用の上昇とあわせて延期され令和10年度に変更されました。しかし、今回の発表でさらに遅れる可能性が示されています。
練馬区は財源不足
これまでの質疑の中でも、練馬区は美術館本体の整備への国や都からの補助金はないとしていました。また、練馬区はこれまで財政が厳しいことを強調してきました。令和7年度当初予算においても支出が収入を上回る財源不足が生じており、それを補うため基金と起債を活用しています。財源不足額は今後拡大が見込まれ、10年後には倍増する見通しです。こうした中で、財源不足への対応のためには、基金取崩しが必要になるため、10年後には基金が底をつく可能性があるとしています。
(練馬区のおさいふ 令和6年度版)
こうした中で、練馬区は学校の長寿命化として必要な補修を加えながら80年まで使用することや学校の統廃合を進める計画などを示しています。その中で、練馬区立美術館は建設されてからまだ40年、なぜ建て替える必要があるのでしょうか?
来年度には美術館・図書館の工事に着手
練馬区は令和7年度中に実施設計と並行し、第三者機関によるコンストラクション・マネジメントを行い、建築工事費や工期などの妥当性を検証するとしています(資料はこちら)。実施設計完了後には解体工事にも着手するとしており、実施設計とあわせて4億9千3百万円を計上しています。令和10年度を予定している開館の更なる遅れも指摘される中で、来年度中になぜ解体を開始する必要があるのでしょうか?少なくとも丁寧な検証が終わるまでは延期すべきです。
(令和7年度 (2025年度)練馬区 当初予算案 記者発表資料)
美術館に109億円をかけるよりも福祉や教育、子育てに予算を
経済状況が厳しい家庭に学用品代や入学に関わる費用などを補助する就学援助、練馬区は受けやすさが23区で下から2番目、金額も最低水準です。経済的に困窮する大学生に対して、足立区や品川区、港区のように返済不要の奨学金を提供する制度も存在しません。豊渓中学校や光が丘第8小学校についても、練馬区独自の基準で過少規模と判断、統廃合の候補にしています。今後もさらなる費用の上昇が見込まれる中で、美術館の整備よりも福祉や教育、子育てにこそ予算をかけるべきだと思います。
これまでの訴えはこちらをご覧ください。