3月22日、区は豊渓中学校の統廃合計画について2回目となる保護者・地域説明会を実施。今回も練馬区は統廃合を前提にした説明を繰り返す中で、多くの意見や反対の声が噴出、理解を得られるものではありませんでした。
説明会の経緯・目的
練馬区は昨年12月11日、豊渓中学校を統合・再編の検討校とすると発表。区立学校適正配置第二次実施計画(素案)で明らかにしたもの。当初は1月に保護者・地域向けの説明会を開催したうえで3月末には決定する予定でした。しかし、突然の発表に反対や怒りの声が噴出した中で、3月末の成案化を撤回。3月22日に再度の説明会を開催し、保護者や地域からのこれまでの疑問や不安に答えるとしました。
当日の説明会での配布資料はこちらです。
豊渓中学校・光が丘第一中学校保護者および地域説明会(第2回)
当日の主な質疑をご紹介します。
1. 地域の合意なしに統廃合を決めないでください!
12月に統廃合の計画が発表されて3月に決定するというのはあまりに拙速です。地域の合意無しで決めるべきではありません。合意形成のためにも地域の関係者を含めた委員会等を作り時間をかけて検討すべきです。
練馬区の回答
今回はあくまで素案の説明会であり、決定はしていません。他方で、練馬区としては統廃合を進めたいと思っていて、理解を頂きたいという説明をしています。4月以降も理解を頂けるよう、説明を行っていきます。今後の進め方については区で検討して考えていきます。
岩瀬の考え
練馬区は統廃合を「決定していない」としてはいますが、実際には統廃合を行うことを前提として話を進めようとしています。練馬区は住民の理解を頂きたいとしていますが、住民が諦めるのを待っているようにしか見えません。本当に理解して欲しいと思うのであれば、対等な立場として時間をかけて住民の意見を聞いて、統廃合の是非そのものを検討すべきです。
2. 小規模校の良さを理解してください!
練馬区は小規模校について「多様なものの見方・考え方にふれる機会が少なくなる」などのデメリットばかりを挙げています。しかし、今年は単学級でしたが、生徒はとても仲良く、小規模校ならではの経験ができています。むしろ生徒が少ないからこそ、生徒の意見が聞くことができて、自信を持つことができます。全学年で協力して成功させる姿は本当に素晴らしいものです。豊渓中学校は既に長い間少人数学級です。小規模のデメリットばかりを強調するのはあまりに乱暴ではないでしょうか?
練馬区の回答
文科省の適正配置の手引きで様々な課題が記載されています。だからといって、現在の豊渓中学校においては(教員や地域の方々などの)様々な努力や協力で問題が顕在化していません。ただ、将来にわたって努力で維持できるということが良いか、そこに依存していることではよくないと考えます。安定的な学校運営を行うために統廃合は必要だと考えます。
岩瀬の考え
練馬区が独自に定めた「過小規模校」の基準は、全国の6割の中学校、区内でも4割以上の学校が過小規模に該当しており、実態に即したものとはいえません。練馬区は学校選択制度を導入している中で小規模だからこそ豊渓中学校を選んだ家庭も多くいます。
豊渓中学校のウェブサイトのトップには次のような文章があります。
”君が知らない先生がいても、君を知らない先生はいない”
この言葉に豊渓中学校の先生の思いや小規模校の良さが凝縮されていると思います。練馬区は地域や教員の努力、協力に委ねるのはいけない、としていますが、地域の多くの方が存続を希望する中であまりに乱暴ではないでしょうか。
3. 豊渓中学校と旭町小学校の小中一貫校にしてください!
地域唯一の中学校を守るためにも、光が丘第一中学校と統廃合するのではなく、豊渓中学校と隣接している旭町小学校と一体化して小中一貫校を作ってください。
練馬区の回答
練馬区は小中一貫校について「18学級~27学級」と決めています。20年後の推計も17学級であり1学級満たないので困難です。
岩瀬の考え
小中一貫校を「18学級~27学級」とするのは、練馬区が独自に定めたルールでしかありません。また、20年後の子どもの数がどうなるか正確に予想することは不可能ですし、少人数学級がさらに進むことも当然考えられるなかで、1クラス足りないから小中一貫校にしないというのはあまりに乱暴だと思います。地域で唯一の中学校を残すためにも、小中一貫校についても真剣に考えるべきです。
4. 将来の人口や建て替え後の運動場の面積、きちんと計算したのですか?
練馬区は豊渓中学校の統廃合が必要な前提として、将来の人口推計や運動場の面積などを挙げています。そもそも20年後の人口はわかるのでしょうか?また、運動場の面積についても十分に確保できないという事ですが、きちんと計算したのでしょうか?
練馬区の回答
20年後の人口推計については、国の推計に基づいていますが、東京都の推計も確認して計算には大きな間違いはないと考えました。運動場の面積については現在、接道が3方向にあります。開発によってセットバックが必要になっており、机上の計算ですが、今は5500㎡だが3000㎡代になると想定しています。今後検討を進める中で明らかにします。
岩瀬の考え
今年度、石神井小学校では区の想定よりも急激に人口が増え、改築を行ったばかりの校舎の増築が必要になっています。わずか数年後の人口も予測できなかった中で、20年後の特定の地域の人口を正確に判断するのは不可能です。他方で運動場の面積については、正確に測定することが可能な中で、なぜ机上の計算のみで判断するのでしょうか?全国で77%の自治体は基準を決めていない中で、そもそも、こうした指標自体を設置すること自体が間違っていると思います。
5.コミュニティの核でもある学校をなくすのですか?
学校は地域コミュニティの要でもあります。特に豊渓中学校は練馬区の公立中学校としては唯一の学校運営協議会(コミュニティスクール)が設置され、放課後学習としてのK中ゼミやK中ベーシック、カフェすずしろなど地域との結びつきも非常に強いものです。こうしたコミュニティとの結びつきをどう考えているのですか?また、旭町小と小中一貫教育を進めてきたのに、そののち旭町小学校もなくなってしまうのではないでしょうか?このままでは若い方がいなくなってしまうと思います。
練馬区の回答
学校運営協議会、保護者の方には感謝しています。「今回の計画で(保護者、地域の方が)抱いた気持ちに対しては申し訳ない」と思っています。これまでの学校運営協議会の取組については、全区的に広げる際の参考にさせて頂きたいと思っています。地域の魅力づくりも大切であり、魅力を高められるように地域の皆様と協議していきたいと思います。旭町小学校については統廃合の計画はなく、今後改築を行います。
岩瀬の考え
保護者や地域の方には感謝する一方で、統廃合については意見を聞かずに進めるということ、これまでのコミュニティスクールの取組について全区の取組に活用するということ、厳しい言い方をすれば地域の方を利用しているように見えます。また、魅力を高めるために協議したいとしていますが、これまで全く住民や保護者の意見を聞く姿勢を示さなかった中で、信頼関係を築くこと自体が今のままでは難しいと思います。
6. 子どもへの影響、距離の問題は?
統廃合という環境の変化による身体的、心理的不安へのケアが十分か心配です。また、通学距離が延びることが心配です。
練馬区の回答
生徒の不安や動揺を軽減することは大切です。交流活動を今後、準備会や調整の中で検討して、交流を深めていきます。心のケアが必要な場合は相談員を拡充して迅速に対応することを考えます。通学距離が延びる旭町2丁目、3丁目の生徒については自転車通学やバス通学(費用は自費)を特別に認めます。
岩瀬の考え
練馬区は心のケアなどについて今後検討するとのことですが、今回の発表によって既に不安や動揺を感じる生徒も多いはずです。また、自転車通学については非常に例外的な対応であり、23区で他に認めている自治体があるか練馬区も把握していないとのこと。安全な通学路を確保するために和光市を通る最短距離ではなく、遠回りをして学校に通うことになるとのこと、大きな負担になると思います。・
7.避難拠点としての役割は?
学校は災害時の避難拠点としても重要な役割を果たしています。豊渓中学校の体育館は残すとのことですが教室や放送機材も必要です。また場所だけの問題ではなく、豊軽中学校の防災組織はどうなるのですか?今後きちんと考えてください。
練馬区の回答
避難拠点として体育館のみ残します。旭町小の改築においても、豊渓中学校、旭町小学校の体育館はそれぞれ残す予定です。
「たまには学校の様子を見に来てください!」
練馬区は20年後の生徒数や運動場の面積などの説明を求められた際に、「机上の計算」という言葉を繰り返していたのが印象的でした。机上の計算で学校の統廃合を決定しようというのでしょうか。
他方で今回の説明会で参加者からは次のような言葉が。
「私達はコミュニティスクール委員会を作って素晴らしい学校を作っています。みんな頑張っているのです、たまには学校の様子を見に来てください」
今回の説明会で住民の理解が得られたとはとても言えません。地域の声が蔑ろにされてきたことへの怒りや不満の声に練馬区は丁寧に向き合い、統廃合の是非も含めて地域の住民と話し合っていくことが求められています。過去の訴えはこちらをご覧ください。