10月18日、練馬区議会の文教児童青少年委員会の行政視察として、大阪府茨木市で活動するNPO法人「シェアリンク茨木」を訪問しました。同団体は、DVや貧困などさまざまな事情で住まいを失った10代〜20代の若者を対象に、府営住宅を活用したシェアハウスを運営しています。茨木市、地域住民、不動産業者と連携し、2021年に開設。現在は最大18名の受け入れが可能な体制です。

練馬区でも今年度から「ねりま羽ばたく若者応援プロジェクト」を開始し、18歳以上を対象に家賃補助などを行っている中で、非常に参考になる取組でした。

■問題意識

運営されている辻由起子さんのお話では、若者支援の現場には、「制度を守るけれど人を守れていない」「年度末で打ち切られる」といった構造的な課題が長らく存在してきたとのことでした。だからこそ今回のような、行政・地域・民間が協力した形でのシェアハウスを運営されているとのことです。


■シェアハウスの運営

「シェアリンク茨木」では、大阪府営住宅6戸(3LDK)+コミュニティルーム1戸を借り、1戸あたり1名で入居、最大18名の受け入れ体制を構えています。公営住宅の空き室を若者支援に活用する試みは、全国的にも注目されている初のケースです。note(ノート)

 家賃は月額35,000円に設定。年額では約443万5千円というお話でした。入居直後は収入が不安定な若者からは家賃を徴収せず、1年ほど経って自立が進んだ段階で支払いを受ける形で、全体のバランスを保っているとのことでした。

また、運営にかかる人件費は発生せず、全てボランティアでの運営体制が成り立っているとのこと。
入居期間に定めはなく、「必要なだけ過ごせる」という柔軟性も印象的でした。そのうえで、入居希望が「殺到」という状況ではないという点も、事業の継続性を考える上でも参考になりました。


■官民連携による支援体制の構築

視察で特に印象に残った言葉は「支援は『相談』ではなく『雑談』から始まる」というもの。食事を共にし、リラックスした状態でお腹が満たされると、本音が出やすくなるというお話でした。
また、「人対人」「組織対組織」ではなく「人対課題」という視点で関わることが不可欠、という指摘も非常に印象的でした。制度や法律をどれだけ増やすかよりも、住民同士が助け合える「住民力」を高める方が、迅速で柔軟な支援につながるというお話にも共感しました。


■練馬区の取組

本区では今年度から「ねりま羽ばたく若者応援プロジェクト」を開始しています。対象は区内に住む18歳以上の若者で、「ささえる」「つながる」「しらせる」の3本柱で支援を進めています。(詳細はこちらをご覧ください:練馬区)

経済的支援として、民間アパートの借り上げや光熱費補助、伴走型支援としてNPOによるサポート等を組み入れており、シェアハウスではないものの、シェアリンク茨木の機能に近い面もあります。ただし練馬区では入居期間の上限が6か月という点に限界も見られ、また、現時点では入居者はいないとのことでした。


■練馬区に参考になる部分

「事業の成功は資金だけでなく、運営する人の“魂”が不可欠であり、本質的には俗人的なものである」「良い空間・場所・関係性を築くのは人であり、人がいなければ何も始まらない」

という言葉も印象的でした。

行政だけで動くのではなく、シェアリンク茨木のように熱意を持ちつつ当事者に寄り添える民間人や団体といかに協働できるか。その仕組みづくりこそ、今後の成功の鍵になると思います。そのためにも、練馬区として間口を広げ、民間との連携をさらに強化していく必要性を強く感じました。

これまでの視察報告についてはこちらをご覧ください。