外国ルーツの方、特に在日クルドの方へのヘイトスピーチがSNSなどで厳しさを増す中で、現地の実態を学ぶために所属する多文化共生・自治体政策研究会のスタディツアーで蕨市や川口市で活動するNGO「在日クルド人とともに」を視察しました。

昨今ネット上では、クルド人に関わる一部の事件や事故が必要以上に取り上げられて拡散され、あたかもクルド人の存在そのものが治安を悪化させているかのような投稿が見受けられます。しかし川口市では外国人の人数が過去20年で約3倍になっているのにもかかわらず、犯罪の認知件数は逆に約3分の1に減少しています(川口市「川口市・埼玉県・全国刑法犯認知件数の推移」https://www.city.kawaguchi.lg.jp/material/files/group/15/H16-R6ninntikennsuuhoka.pdf )。

どの国籍・民族の人であっても違法行為は良くないですし、文化的な摩擦もあるのは事実で双方の意識啓発と努力が必要だと思いますが、何よりファクトに基づいたフェアな対応が必要と感じています(詳しくは難民支援協会「在日クルド人をめぐる「問題」を考える」https://www.refugee.or.jp/report/activity/2025/09/post-18762/#kurd8 )。

1.クルド人について

クルド人は独自の言語と文化を持つ民族で、トルコ、イラク、イラン、シリアなどにまたがって暮らしてきました。関東では埼玉県内、とりわけ蕨市・川口市周辺でコミュニティが作られ、解体業などの現場労働に従事する方も多く、特定エリアに集住しています。

統計上は「トルコ国籍」とされるために実態を把握するのが困難ですが、支援団体等の整理では、蕨・川口を中心に暮らすクルド人は約2,000〜3,000人と推計され、両市の外国人住民総数(約5万7千人)において3.5〜5%程度とのこと。

2.ヘイトスピーチの状況

代表の温井さんのお話では、ヘイトが日常の安全と尊厳を脅かしているとのこと。

2024年11月にはさいたま地裁は日本クルド文化協会事務所の半径600mでのデモを禁じる仮処分を出しました。さらに今年に入って、クルド人の子どもが男性から殴られてしまったというヘイトクライムも発生しています。

「法律がなければ、おまえらなんかぶっ殺してやるよ」被害の映像にはこんな言葉すらも残っていたとのこと。

(出典:東京新聞 「法律がなければ、ぶっ殺してやるよ」 クルド人に向けられるヘイトが、参院選後エスカレートしている

また、クルドのお祭り(ネウロズ祭)の開催に際しても法的意見書の提出を経てようやく実施にこぎつけた事例も共有されました。

3.会の活動

「在日クルド人とともに」は、当事者と地域をつないでいて、日本語教室は年間のべ学習者が数百人規模に達し、地域の日本人ボランティアも多数参加しています。医療では、仮放免のため健康保険に入れず受診を控える方に同行支援や費用助成を行い、教育では、住民票がないため就学案内が届かない家庭に学校との橋渡しをしています。また、写真展や多文化フェスを通じて地域に事実ベースの情報を届け、出会いと理解の機会を増やしているとのこと。

4.今後に向けて

練馬区でも様々な形でヘイトスピーチが顕在化をしている中で、区としてもファクトを積極的に共有し、データでデマ情報を否定していくことやヘイトスピーチを許さないという明確な姿勢を示すことがが必要だと思います。目指すべきは、「共に生きるためにどう支え合えるか」を起点とした取り組み、今後も訴えていきます。ご意見などありましたらぜひお寄せください。

過去の訴えはこちらをご覧ください。