参院選を前に、外国人政策がかつてないほど大きな争点となっています。「外国人が生活保護を受けすぎている」「国民健康保険を滞納して制度を壊している」といった言説がネットに飛び交い、中には排斥を訴える政党も存在します。

しかし、これらの言葉は本当に事実に基づいているのでしょうか? 練馬区の具体的な公的データをもとに、二つの代表的な主張――「生活保護の33%が外国人」、「外国人が国保制度を破壊している」――を検証します。

【検証①】「生活保護の33%が外国人」は事実か?


▶ 実際の比率は2%台、むしろ微減傾向

練馬区の生活福祉課によると、生活保護受給世帯に占める外国人の割合は以下の通りです:

  • 2015年度:2.4%
  • 2019年度:2.3%
  • 2023年度:2.2%

つまり、33%どころか2%台で推移しており、むしろ減少傾向にあります。この間、受給世帯全体は13,000件前後と大きな変化はありません。

▶ 外国人住民数は50%以上増加

注目すべきは、2015年から2023年にかけて練馬区の外国人住民が50%以上増えていること。つまり、住民が増えているにもかかわらず、生活保護受給率は相対的に下がっているのです。

▶ 全国でも外国人はわずか2.8%

全国レベルで見ても、2023年7月時点の生活保護受給世帯は162万6,263世帯。うち外国籍世帯は4万5,973で、全体のわずか約2.8%にすぎません。

▶ 誤情報が差別と分断を助長する

「生活保護の33%が外国人」という事実とはかけ離れた数字が広まることで、外国人住民に対する誤解や差別が助長されてしまいます。必要なのは、事実に基づいた冷静な議論です。

【検証②】「外国人が国保制度を壊している」は本当か?


▶ 外国人加入者は全体の9%

2023年時点、練馬区の国民健康保険加入者は128,957人(13,650世帯)。このうち、外国人加入者は8,308人で、加入者全体の約7.5%です。

外国人被保険者の加入状況の推移

(出典:ねりまの国保

▶滞納率は高め、だが実態は複雑

外国人の滞納世帯は3,236(全体の約19%)と、確かに相対的に高い滞納率です(出典:練馬区 令和6年9月25日 決算特別委員会)。ただし区の説明では、これは就労が不安定な若年層や留学生が多いことが背景にあるとのこと。

▶ 滞納額は小さく、高額滞納者は日本人が多数

練馬区では国籍別の滞納額は公開されていませんが、担当課によると外国人滞納者の多くは少額滞納。一方で、高額滞納上位1万人のほとんどは日本人です。

さらに、制度上は1年以上滞納すると医療費は全額自己負担となり、制度の恩恵は受けられません

▶ 全国データでも「支える側」

全国でも、外国人は国保加入者全体の4%にすぎず、使った医療費はわずか1.39%(NHK報道)。むしろ制度を支える側だとさえ言えるのです。

(出典:NHK「外国人優遇」「こども家庭庁解体」広がる情報を検証すると

■ 怒りの先を、外国人ではなく政治へ


多くの方が今の生活に不安や怒りを感じている――その感情は理解できます。しかし、その怒りを本来向けるべきは、現在の政治であって、外国人やLGBTQ、障害者などマイノリティではないはずです。

私自身、「マイノリティが住みやすい街は、誰にとっても住みやすい街だ」という信念のもと、10年以上活動してきました。駅頭では「マイノリティが住みやすい社会ということは、日本人が住みにくい社会なのですか?」と問いかけられたこともあります。

でも、それは違います。誰もがマイノリティになる可能性を持っているからです。年を取ること、女性であること、子どもを育てること、セクシュアリティや国籍の違い…。一人ひとりが抱える生きづらさを社会全体で支えることが、真に誰にとっても住みやすい社会になると信じています。

■ 排斥ではなく、包摂を


人間に「ファースト」も「セカンド」もありません。誰かを排除してもいいという社会は、自分自身も排除される側になる可能性があります。

私たちが目指すべきは、「共に生きるためにどう支え合えるか」という取組です。いま必要なのは、「排斥」ではなく「包摂」です。事実と人権規範を土台に、分断ではなく連帯と共生の道を選ぶべきです。

これまでの訴えはこちらをご覧ください。