9月25日に実施した決算審議(都市整備費)では、家賃上昇により多くの区民が苦しい状況に置かれている現実をふまえ、区として家賃補助の導入を検討するよう訴えました。質疑の主な内容をご報告します。
■ 練馬区でも3年で家賃が10%以上上昇!
住宅費の高騰は、区民の暮らしを大きく圧迫しています。民間調査によれば、練馬区の平均家賃は昨年度までの3年間で10%以上上昇し、いわゆるバブル期の上昇率をはるかに上回るペースです。25㎡のワンルームでも、区内の平均家賃は8万円に達しています。
■ 家賃補助を求める陳情も
こうした中、区議会には「住宅困窮者への家賃補助の創設及び現行制度の拡充等」を求める陳情も提出されています。
03【資料3】陳情第101号 住宅困窮者への家賃補助制度の創設及び現行制度の拡充等を求めることについて
■ 現行の支援(住まい確保支援事業)
現在、住宅困窮者支援の中心となっているのが「住まい確保支援事業」です。区では、とくに高齢者や障害者、ひとり親家庭など、自力で契約や転居手続が難しい方を対象に、物件紹介や手続支援を行っています。
■ 情報紹介事業の推移
このうち、区と不動産会社が希望に合う物件を紹介する「情報紹介事業」では、申込者が2022年度の153名から昨年度は160名へと増加しました。他方で、実際に紹介できた物件数は、2022年度の347件から昨年度は50件へと激減し、わずか3年で8割以上の減少となっています。その結果、昨年度は160件の申込みに対して、実際の成約はわずか1件にとどまりました。もう一つの伴走型支援を含めても、昨年度の成約率は約5%で、令和4年度の14%から大きく落ち込んでいます。
【質問➊】紹介できる物件が8割以上減少した理由
わずか3年で「紹介できる物件数」が8割以上も減少した理由について、区の認識は?
【区の回答】
新型コロナ後、区内への転任希望者が増加しており、高齢者等の要配慮者に紹介できる物件が減少している。
【反論】
区の回答は一面的には事実です。しかし、練馬区居住支援協議会の議事録では、紹介できる物件が減った大きな要因は家賃の上昇にあり、さらに低家賃帯のアパート在庫がほぼ消滅しつつあるとの指摘もなされています。つまり、「要配慮者が住める低額の物件がない」という、根本的な不足が起きています。
【質問➋】今年度の区の対応
この状況を受け、練馬区は今年度、どのような対応を講じたのか。
【区の回答】
本年4月から、住まいサポーターの配置、転居(転宅)費用助成の開始、家主への6万円の補助金、保証料助成の充実など、住まい確保支援策を拡充した。
【反論】
方向性は評価します。しかし実績を確認したところ、家主への補助金の申請はゼロ、保証料助成は1件、転宅費用助成は3件と、現時点では効果がほとんど表れていません。善意の制度が、必要な方に届いていないのです。
【質問➌】家賃補助の必要性
問題の核心は、要配慮者が住める低額物件が存在しないことです。物件紹介だけでは解決せず、家賃補助が不可欠だと考えます。練馬区が実施している要配慮者への家賃支援は、どのようなものか?
【区の回答】
区営住宅の提供や、高齢者向けセーフティネット住居、高齢者優良居室などで対応している。新たな家賃補助を行う考えはない。
【反論】
この内容では、現実に追いつけません。セーフティネット「専用」住居の居住者への支援については、現時点で対象となる住居自体が存在していません。高齢者向けの家賃補助についても成約はわずか5件にとどまります。区営住宅の倍率は高齢者集合住宅で50倍、世帯向けでも7.2倍という狭き門です。高齢者に限らず、住居確保要支援者全体へ対象を広げ、支援内容を実効性ある水準に拡充すべきです。
■ 子育て世帯への支援について
さらに、家賃補助が必要なのは高齢者、障害者、ひとり親だけではありません。子育て世帯の厳しさは切実です。
【質問❺】他区の家賃助成を踏まえた提案
新宿区、豊島区、目黒区では、月額2~3万円を上限に所得制限を設け、抽選で最大3~5年の家賃補助を実施しています。こうした事例を参考に、練馬区でも子育て世帯への支援を検討すべきではないか。
【区の回答】
公営住宅には若年ファミリー向けとひとり親世帯向けの枠を設けている。引き続き住まいの確保に取り組む。
■ 最後に…住まいは人権、今こそ実現を!
しかし、区営住宅の募集はわずかで、物件自体が少ないため多くの方が諦めざるを得ないのが実情です。半数が落選する現実もあります。だからこそ他区では家賃に直接作用する補助を導入しています。「住まいは人権」――世界人権宣言がうたうこの理念が、いまほど切実な意味を持つ時代はありません。物価高騰の中、家賃に苦しむ区民の現実を直視し、今後も行政として責任ある対応を強く求めていきます。
参考リンク
練馬区の居住支援(公式):居住支援協議会・住まい確保支援
新宿区の家賃助成(公式):民間賃貸住宅家賃助成(子育てファミリー世帯・月3万円・最長5年) / 次世代育成転居助成(家賃差額・引越費用)
豊島区の家賃助成(公式):子育てファミリー世帯家賃助成制度(制度変更あり)
目黒区の家賃助成(公式):ファミリー世帯家賃助成 / 家賃助成(制度一覧)