本日は佐賀県の武雄市立図書館を視察。この図書館、TSUTAYAを経営するカルチュアコンビニエンスクラブ(CCC)が指定管理業者になって運営を行っています。この図書館、2013年の開館以来、様々な問題が噴出しています。その中でも特に大きな論点は以下の通りです。

1)図書館のあり方
そもそも図書館は何のためにあるのでしょうか?
図書館法では、図書館の役割は必要な資料を収集し、整理し、保存して、人々の教養、調査研究等に資することとあります。しかし、TSUTAYA図書館ではここに謳われた本来の役割ではなく、集客や利便性、経済効果のみに重点が置かれていて図書館機能が十分に果たされていません。

2)選書について
武雄市がCCCに委託した際、1900万円が新たな図書購入のために計上されました。その際の選書はCCCが行い、調達もCCCの子会社から行いました。

図書館機能の核である選書を指定管理業者が行ったこと自体大きな問題です。さらに、購入された書籍には2001年の公認会計士試験や北海道の美味しいラーメン2002年など、古すぎて役に立たないものやそもそも図書館には不適切なものが大量に含まれていました。この件については、2015年9月にCCCも正式に謝罪をしています。

3)分類について
全国の図書館では十進分類法を使っていますが、TSUTAYA図書館では独自の分類を行っています。その分類が非常にわかりにくく、さらに間違っています。例えば、武雄市同様にCCCに委託された海老名市立図書館では、「出エジプト記」が旅行コーナー、吉本ばななの「とかげ」が昆虫コーナーにあるなど冗談のような間違いが指摘されています。

4)情報管理
TSUTAYA図書館では、図書の貸し出しにTSUTAYAカードも用いています。その際、貸出履歴を含めた個人情報がすべて漏れてしまうのではないかといった不安の声があがっています。

5)行政による民業圧迫
借りる際にTSUTAYAカードを用いると、1日あたり現金にして3円分のポイントが付与されます。行政が行う図書館のサービスで特定企業の便益を提供することは大きな問題です。また、館内では大量の雑誌や新刊本の販売も行なっていて、そのことが地元の書店などに対する圧迫となっています。

そんな中、本日の視察が行われました。

他の自治体と共同での視察で時間が非常に限られていたので、私からは特に、武雄市が考える図書館のあり方について質問を行いました。

そして、話を聞く中で強く感じたのは、「これは図書館ではない」ということ。

説明では、前市長が武雄市図書館の目標としたのが「代官山の蔦屋書店」、間接照明があたるおしゃれな空間でカフェを飲みながら本を読む姿、とのことでした。さらに、TSUTAYA導入の目的は「本を読まない方、図書館に来ない方に来てもらうこと」とのこと。

また、人口が5万人の市で、来館者数が委託前の2011年度は25万人だったのが、2014年度は80万人に達していること、県外からの来客も増え、経済効果は20億円に達していること、また、図書館の近くの地価も上がっていることなど、次々と説明がありました。

しかし、これは図書館が目指すべきことではありません。町おこしや経済効果の向上など、その他の事業でやればいいこと。それによって本来の図書館機能がおざなりになっては本末転倒です。

実際、2011年度との比較で来客数は3倍以上になったにも関わらず、貸し出し数の伸びはわずか15%。決して成功しているとは言えません。また、来客数そのものも、オープン初年の一昨年の92万人に比べて12万人も減少しています。

図書館の中を歩いても、「これは図書館ではなく、カフェがついたおしゃれな本屋」という印象を受けました。

まず、入った瞬間に大量の本が平積みされていましたが、それを手に取ると、すべて販売のもの。そして、館内の図書検索機をチェックすると、最初の画面で、「本の検索」と「本の購入」が同じサイズで案内されていて、さりげなく本の購入を進められている気が…さらに、販売コーナーと貸出コーナーの境が非常にわかり難い。こうしたことすべてが本を購入させることを目的としている気がします。

そして、問題の本の陳列。迷宮のようになっていて、どこに何があるのかわかりにくい。特に上の書架、「飾り棚」と呼ばれていますが、あまりに上にあって手が届かないばかりか、書名すらも読めません。さらにこの「飾り棚」、名前の通り、本を埋めることを目的としていて、分野と内容が全くあっていない。例えば「ロビンソンクルーソー」などの児童書が、なぜか「生活・実務」のコーナーで置かれていました。

視察の感想、武雄市図書館は「図書館」ではなく「カフェのついたおしゃれな本屋」であり、これが図書館のモデルとは決していえません。そもそも、図書館の目的は、国民が文化的な生活を送るためのインフラを提供することであり、指定管理業者への委託には馴染まない、ということでした。

練馬区でも指定管理業者の導入が進んでいますが、そもそも図書館の目的は何か、ということを鑑みると、利潤を追求する民間企業の運営には馴染まないと実感しました。