2020年度までに小学校の英語教科化、2021年からは中学校の英語授業のオールイングリッシュ化が決定しています。2018年からは先行実施も始まろうとしています。

そんな中、先日の予算特別委員会では小中学校での英語教育をいかに改善していくか、提案を行いました。

<論旨>
1. ALTの活用について
英語教育の重要性が再認識される中、練馬区においても2007年度から中学校、2015年度からは小学校にもネイティブスピーカーである外国語指導助手(Assistant Language Teacher、ALT)が導入されました。

早期からALTを活用してコミュニケーション能力を向上しようとする取り組みは評価できます。ただし、英語教育の質をさらに向上させるためには改善すべき点も存在します。

練馬区では現在39名の外国籍の方がALTとして採用されていますが、彼らはすべて派遣契約です。現在は学校の教職員とは別の契約・勤務体系にあり、ごく短期間の契約で、更新の保障もありません。

また、派遣であることから、同じ学校で教育に携わるにもかかわらず,他の教職員との間で、一体感を持ったり効果的に連携したりすることが困難です。例えば、職員会議に参加して学校運営に関わる事項を共有することや、他の教員と協力して、積極的に英語教材や計画などの開発・改善などを行うことが困難です。

安定的、継続的に質の高い授業を提供するためにも、望まれるのは派遣ではなく直接雇用だと思います。

他の自治体との比較においても、文部科学省が実施した「平成25年度 英語教育実施状況調査の結果」を見ても、全国のALT(総計12,631名)の内、20%以上(2,543名)が自治体によって直接任用されており、派遣契約は13.6%にとどまっています。

また、2015年9月には、日本の弁護士の60%が所属する関東弁護士会連合会が「児童・生徒のより良い英語教育を受ける権利の実現を担うALTの労働実態の是正を求める意見書」を採択し、その中でもALTの権利の擁護と小中学校での英語教育の質の向上を目的に、自治体によるALTの直接雇用を求めています。

こうした中で、学校における英語教育の安定的、継続的な質の維持・向上、また外国人労働者の権利の保障のためにも外国人非常勤講師や外国人特別非常勤講師としてALTの直接任用を検討いただきたいと思います。

2) 学校教員の能力強化について
続いて、学校の教員への研修について伺います。平成26年に文部科学省が作成した「小学校における外国語活動の現状・成果・課題」によると、全国の教員のなかで、英語教育について学校で学んだ方はほとんどいらっしゃらず、中学校の英語の指導教員の資格を持っている方はわずか3%です。また、ある程度英語を話せる方の割合ですが、TOEIC730点(英検準1級程度)を基準としても保持者は0.8%にとどまっています。先生によってはアルファベットのDの発音もあやういという例も聞いています。

そうした中、前述の文部科学省が実施した調査では、ALTと協働して行うTeam Teaching(TT)がうまくいっていない理由としては、ALTとの打合せの時間がほとんどない、英語でのコミュニケーションがとれない、などといった基本的な事柄が上がっています。

こうした状況を改善するためにも、教員からはALTを活用しつつ、担任主導で授業を展開するための研修を積み重ねて行きたいとの声もあがっています。そのため、継続的、安定的に質の高い教育を提供するためにもALTとの共同によるTTの方法について教員への研修を行うべきだと考えます。

小中学校での英語教育の更なる向上、そして外国人労働者の労働条件を守るためにもALTの直接雇用の実現と教員に対するTTの方法への研修の実現を切に要望します。
<ここまで>

これに対して、区の回答は「練馬区では独自に優秀なALTを見つけることはできない。また、研修も派遣会社にノウハウがある。だからこそ派遣会社に任せた方が望ましい。」というものでした。また、教員の研修については、すでに十分に実施しているが今後も検討をしていく、というものでした。

小中学校の英語教育において非常に重要な役割を担うALTをすべて派遣会社に丸投げするというやり方が、練馬区の教育全体にとって望ましいとは思いません。例えすべてを直接採用することがすぐには難しくても、継続的な英語教育を実現するためにも核となるALTを育てていくべきだと思います。