★23区で唯一児童相談所を作らないと言っている練馬区、本当にそれでいいの?
来年度のお金の使い方や区の方針を決める予算委員会、子ども家庭費では虐待を受けている子どもへの支援について訴えました。虐待が全国的な問題となっている中で、政府はこれまで都道府県や政令指定都市などでしか設置することができなかった児童相談所を23区でも設置できるよう法律を改正しました。世田谷や江戸川、荒川では4月には児童相談所が開設します。そんな中で23区の中で練馬区だけは児童相談所を設置する予定はない、としています。ではどうやって子どもを守ろうというのでしょうか?地域での児相の設置、支援体制の強化を訴えました。区とのやり取りをご紹介します。(詳細は議事録をご覧ください)。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190331-00010001-wordleaf-pol
★今の児童相談所は問題だらけ ①職員が足りずに一人で63ものケースを担当!
現在の児童相談所の問題として、第一には子どもや家族と直接向き合う児童福祉司の方が全く足りていないと言われています。昨年度の実績を見ると、練馬区を担当する新宿区の児童相談センターでは一人当たり63.8ものケースを担当しており、目標としている40ケースよりもかなり高い数字です。私がヒアリングした以前児相の職員だった方も担当が100人を下ったことはないとのことでした。担当ケースの多さとともに、近年、急に人を増やしているなかで職員の経験不足も大きな課題になっています。
★今の児童相談所は問題だらけ ②子どもを保護するはずの一時保護所が刑務所みたい…
児童相談所の中で、虐待などを受けた子どもを一時的に保護する一時保護所も深刻な状況です。2019年3月、東京都に対して第三者委員(弁護士)から「東京都児童相談所一時保護所への意見書」が提出されました。私自身、意見書で書かれているあまりの惨状に読みながら正直、吐き気がしました。
練馬区の子どもも入っている東京都の一時保護所では、私語や目を合わせることも禁止するなど、たくさんの厳しいルールが存在しているとのことです。ルールを破ると「個別対応」として、ついたてで仕切った場所で漢字の書き取りを長時間させたり、グラウンドを何周も走らせるなど「指導の名の下に、罰を与えている」などと書かれています。
「刑務所みたいで、感情をなくし、脱走してしまいたくなる」「誰かと話したい」「安全だけど安心ではない」。「テレビ見るときも『この向きだと話したくなるでしょ』と座る位置
を布回の真ん中に指定される。」「「ニコニコしているだけで『何笑ってるの?』と言われ,笑うこともできない。」
虐待など過酷な状況からやっと逃れた保護所で、過剰なルールに縛られ心が休まらない生活を強いられる子どもの叫びもつづられています。私も経験者の方からお話を伺ったのですが、保護所に入ると名前ではなく、番号でしか呼ばれないということ。授業の代わりに大量のプリントをさせられて、終えられなければ、その枚数文だけグランドをひたすら走らされる。本来一番に守られるべき子どもたちなのに、最低限の人権すらも守られていない、というのが現状です。
1.一時保護所の問題について、練馬区としてしっかり対応すべき!
こうした課題に対して、練馬区としてどのような対応をしているのでしょうか、また今後対策を取ることを考えているのでしょうか?
【区の回答】
一時保護所について、何だか区が悪者かのような言い方をされたような印象を受けていますが、一時保護をする東京都がその課題について真摯に受け止めて、一時保護所の強化に取り組んでいます。一時保護所における具体的な運営等については、区が何か意見するものではないと考えています。
【岩瀬の感想】
私は都の第三者委員(弁護士)の意見を紹介しただけで、私自身が何か悪意を持って話したわけではありません。練馬区は一時保護所の中身について意見をいうつもりはないとのことですが、練馬区の子どもたちも過ごしている一時保護所で何が起こっているかを知らないはずはありません。東京都に任せきりというのは責任の放棄だと思います。
2.こんな問題を解決するためにも児童相談所の設置を!
東京都に児童相談所を任せている限り、練馬区として子どもに責任を持って向き合うことはできません。他区が児童相談所を作ろうとしている最大の理由、それは「地域の子どもは地域で守る」という思いです。他区では単に児童相談所を作ることを目的にしているわけではありません。世田谷、江戸川、そして横須賀の児相でお話を伺いましたが、一時保護所を含めた児童相談所はどうあるべきかを考え、多方面から意見を聞き、それを自区に活かしたいと考えていました。だからこそ練馬区も児童相談所を設置に向けて検討すべきです。
【区の回答】
区が児童相談所を設置した場合、その区の行政区域は都児相の管轄から外されます。法制度上、区は児相が担っている広域的、専門的な対応を担うことになります。しかし、他区では児相を設置しても、都の児相による支援が引き続き行われて、児相設置区においては都の児相職員を派遣することも都に要請しています。区が児相を作るのであれば自律的な運営が大前提であり、広い範囲の業務を区が行うのは限界があると思います。一時保護所についても、区が設置しても根本的な問題の解決にはなりません。親子分離が必要な重篤なケースは施設入所などの広域的な対応や専門的な支援が必要です。親子分離等の法的な措置と地域での子どもや保護者に寄り添った支援というのは同じ機関が行ってもうまくいきません。
【岩瀬の感想】
もちろん区が児相を設置することですべての問題が解決するとは思いません。しかし、一時保護所をはじめとした現在の問題に目を向けず、ただ東京都にこれからもお願いする、ということが本当に正しいことなのでしょうか?他の区では問題を抱えながらも、何とか自分達で地域の中で課題を解決しようとしている中で、練馬区の姿勢はあまりに消極的です。
3.練馬区の『虐待対応拠点』って名前はすごいけど、実際はどうなの?
練馬区は虐待への対応として7月に「練馬区虐待対応拠点」を設置するとしています。区の説明ではこの拠点には週に2回程度、東京都の児童相談所の職員が来て仕事をするとしています。しかし虐待対応拠点では何ができるのでしょうか?具体的には、電話での新しい相談などへの応対はできるのでしょうか?虐待対応拠点ができることで相談時間は伸びるのでしょうか?
【区の回答】
こちらの拠点では、ケースや業務の内容に応じて練馬区で実施した方が効率的、実効的であったり、児童、保護者の利便性が図られたりする場合に区の職員が活用するものです。新規の受付は予定していません。一時保護などは引き続き新宿のセンターが決定します。
【岩瀬の感想】
基本的には、東京都の児童相談所で行っている業務の一部を週に数回、練馬区で行うだけのことで、新規の相談も受けないとのことです。世田谷区では児童相談所の設置に伴い、24時間の電話相談窓口を開設することにしました。児童相談対応拠点とするならば、更なる権限の拡大とともに、虐待の大半が夜間に発生するということも含めて、相談時間の拡大なども検討すべきです。
【岩瀬の思い】「地域の子どもは地域で守る!」児相の設置を!
練馬区はこれからも児童相談所は東京都が担うべき、としています。しかし、区も現在の児童相談所では子どもを十分に救ってこれなかったことはわかっているはずです。他区では様々な課題や困難を抱えながらも「地域の子どもは地域で守る」という思いで児童相談所の設置に向けて努力を続けています。基礎「自治」体である練馬区も新たな一時保護所のあり方、児童相談体制のあり方を自分達で考え、実践していくべきだと思います。今後も訴えていきます。