2月21日の予算委員会、練馬区が70億円以上をかけて実施しようとしている美術館の建て替えを取り上げました。多くの方からご助言を頂き、基本理念、費用、設備の観点から質疑を行いました。区の問題点を明らかにしたという意味で意味があったと思います。今後も区民への誠実な対応を求めていきます。

再整備に関わる素案はこちら↓

 https://www.city.nerima.tokyo.jp/kusei/keikaku/shisaku/kumin/bijyutsukankousou.files/soann-zenbun.pdf

【1.コンセプトについて:区が提供する「本物」ってなんだ?】
区が考える新生美術館、根底となる「リニューアルコンセプト」として「『本物』のアートと出会える機会を提供する」と繰り返し強調しています。そもそも区が提供する「本物」のアートとはなんでしょうか。

【区の回答】
近代美術を中心に、本物の作品に出合える機会を提供する…

【岩瀬の主張】
作品が本物か否かは見た方が判断することです。区民の方からも「行政が自分たちの判断で「本物」と呼ぶ、そこにある種の権威主義を感じる。」といった声も寄せられています。芸術とは権力や価値観から心を解き放ってくれるものです。練馬区が本物のアートと出会える機会を提供するよりむしろ市民が主役となるような、美術館のあり方をもう一度考えて頂きたいと思います。

【2. 美術館等再整備に関わる費用…いくらか分からないの?】
練馬区は大規模改修を基本とした場合は70億円程度と試算を示したものの、建て替えである改築の費用は明らかにしていません。他方で、来年度には4000万円を超える基本設計の予算を計上しています。いくらかかるかを区民に説明しないまま、多額の税金をかけ、公共事業を進めることは誠実ではありません。予算を審議する現段階でせめて概算を示すべき、区の答弁を求めます。

【区の回答】
現段階では答えられない。

【3.美術館の施設について…公開承認施設、必要なの?】
基本構想では「本物」のアートに出会うための方法の一つとして、「文化庁の公開承認施設を目指す」としています。基本構想策定検討委員会の議事録を読みましたが、その提言にいたるまでなぜ「公開承認施設」が必要なのかの議論はおろか、その言葉自体が一度も出ていません。なぜ、突如として提言に文化庁の「公開承認施設」を目指すことが含まれたのか、誰が、いつ提案し、どのように提言にもりこまれたのか、明確な答弁を求めます。

【区の答弁】
検討委員会の中で全体的に議論した…。

【岩瀬の主張】
具体的に答えられないということ、練馬区が自らの意向で提言を書き、それを追認してもらったというように見えるものです。

【最後に】
今回の構想には理念、予算、設備、など解決すべき問題が数多く残っています。国際博物館会議(ICOM)は2019年京都大会で、これからの(博物館)美術館についての新たな定義が議論されました。その根底には、作品中心から人中心となるべきという思想があります。
地域の美術館のあるべき姿は、芸術に触れる機会がない方々、美術館に行く気力や元気もない方々に対して、芸術の美しさ、美術が持つ力を発信していくこと、そして美術館を通じてコミュニティを作っていくことだと信じます。辛くなった時に来られる場所、違いを超えて楽しめる場所、そして何よりも地域の方々が余所行きではなく愛着を持ってこられる場所になることを求めます。