400世帯もの住居を立ち退かせる予定の稲荷山公園の整備計画、総予算は数百億円に上ることが予想されます。予算審議では整備方針を検討する専門家委員会での議事概要(議事録)が勝手に変更されていたことを追求するとともに、住居の除却に伴う地球温暖化への影響、カタクリの保全のことなどを訴えました。

【論点1.専門家委員会の議事録の変更について】

昨年、専門的な見地から稲荷山公園の整備内容、自然環境の保全方法および段階的な整備の進め方などについて検討するため、「稲荷山公園の整備に関する専門家委員会」が設置、10月に1回目の委員会が開催されました。

しかしその後、練馬区が公開した「議事概要」では、区が実際に委員会で発言した説明とは全く異なる内容に「変更」されていることが明らかに。具体的には、設置目的の一つでもあるカタクリの保全のために、清水山を覆っている笹を切る、いわゆる笹狩りについて当初は地域全体で10センチ程度で行っているとしていたものを、指摘を受け、限定された地域のみだったとした重要な説明です。

変更に気付いた区民が2月14日、道路公園課に指摘した所、区はその日のうちに修正。現在は「事務局の当日の説明に誤りがありましたので正しい内容に修正しています。」と記載されています。もし区民からの指摘が無ければ、修正されないまま今も公開されていたことになります。

そもそも、議事概要は「公文書」であり、法律でも「民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」としており、勝手な変更は許されるものではありません。

【質問】

なぜ議事概要を委員会の発言から変更したのか。

【区の回答】

事務局から委員に説明した内容に誤りがあったので、委員に説明したうえで、議事概要として作成した。ホームページに掲載する際に、説明の注釈が移動していた点は、指摘を受けて直ちに正しい内容に修正した議事概要であることをホームページに追記した。今後は適切な対応をする。

【岩瀬の意見】

たまたま今回は区民が気づいたから訂正されましたが、あってはならないこと。二度とないように求めます。

そもそもなぜ練馬区は、委員会での説明を議事録で修正するに至ったのでしょうか。それは委員会において、練馬区の知識が不十分だったためです。練馬区は今回の誤った説明の他にも、専門家からの多くの質問に、その場で回答出来ず、調べてから回答すると答えています。今回の説明の修正も、傍聴した住民からの指摘が無ければ誤りにすら気づいていませんでした。だからこそ、専門家委員会に地域の代表を加えるべきです。

【論点2.地球温暖化対策について】

続いて、稲荷山公園整備に係わる地球温暖化への影響について。練馬区は2050年の二酸化炭素排出量実質ゼロを約束し、環境基本計画も改訂しました。他方、今回の整備計画では400棟を超える住宅を除却する予定です。除却することに伴う二酸化炭素の排出量について、現時点での練馬区の試算はしているのか。

【区の回答】

具体的な効果などは今後示していく。公園の整備には環境への負荷軽減などを考慮しながら進める。

【岩瀬の訴え】

整備計画の対象範囲や対象となる住居の数は明らかであるにもかかわらず、試算は行っておらず、いつ計算するかも示せないとのことです。単純に計算しても解体によって1000トンを超える二酸化炭素の排出が予想されます。それだけのCO2を吸収するには数十年を要し、環境負荷も非常に高いものです。総合公園を作るために大量のCO2を生み出すのは本末転倒であり、ぜひ早い段階で計算することを求めます。

【論点3.カタクリの保存について】

清水山におけるカタクリ、もともとは今のように群生していたわけではなく、住民の方が見つけた頃は1万株程度だったと言われています。それをボランティアの方が種を拾い増やしてきた中で、天然記念物に指定した平成元年には推定20万株から30万株に達しました。

練馬区は「市街化の進展等に伴い環境が変化し、希少なカタクリの数は減少傾向にある」としていますが、活動を始めたときには既に市街化しており、むしろ市街化の進展とともに、増加を続けてきました。

しかし、区が清水山の土地を取得、管理を開始したころから減少し、平成28年に清水山公園が整備された時の調査では約10万株まで減少、現在に至っています。なぜカタクリがこれほど減少したのか、カタクリを守り育て来た住民の方は、区が保全のために適切な対応を取ってこなかったためと指摘しています。

カタクリの生育には湿度が最も重要にもかかわらず、区は毎年、笹刈りとして1センチから2センチまで笹を刈っています。住民が長年にわたって改善を指摘した中で、ようやく昨年度から笹刈りの高さをごく一部の地域のみ10センチにしました。なぜ、早い段階で住民の意見を聞かなかったのか?

【区の回答】

カタクリの減少は様々な要因が考えられる。現在は専門家委員会で保全の方法を検討している。

【岩瀬の訴え】

長年地域でカタクリの保全に取り組んできた住民の方々は、今こそ、カタクリを守らないと絶滅してしまうと訴えています。「総合公園を作ることよりもカタクリを守ること。危機的状況を分かって欲しい。」世代を繋いでカタクリを守ってきた地域の方と協力して、まずはカタクリの保全に取り組むべきよう求めます。

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