練馬区議会第一回定例会の最終日、練馬区の令和7年度(2025年度)予算案に反対の討論を行いました。生活困窮世帯への就学援助も23区で最下位の水準、小学校では600を超える教室が30度超え、地域で唯一の豊渓中学校を突如として統廃合の候補に。他方で、美術館の建設費は当初の1.5倍まで上昇し、今後もいくらになるか不明。練馬区は予算審議を通じて、住民に寄り添うことを強調していましたが、練馬区の「寄り添う」とは何を意味するのでしょうか?

インクルーシブな練馬をめざす会を代表し、議案第1号令和7年度練馬区一般会計予算、ならびに議案第2号から第4号までの各予算案に反対の討論を行います。

練馬区の予算は4年連続過去最大、他方で10年で貯金は底をつく見込み

令和7年度の一般会計予算、前年度比で8.9%増、4年連続で過去最大の3,516億8千万円に達します。他方で支出を収入が上回る財源不足も拡大しており、区財政は借金である起債と貯金である基金をあわせ231億円の活用を見込んでいます。そうした中、区の試算ではあと10年以内には基金が底を尽く見込みとのことです。

最大の予算規模にもかかわらず、住民の痛みや苦しみに寄り添う施策は十分とはいえません。予算委員会を通じ、練馬区は住民に対して寄り添い、信頼関係を築くことの重要性を繰り返していましたが、練馬区の言う「寄り添う」とは何を意味するのでしょうか?

生活困窮世帯のセーフティネット、就学援助は23区で最下位水準

未曾有の物価高の中、子育て世帯のセーフティネットである就学援助、練馬区の支給基準は23区で下から2番目、同規模の世田谷、大田区では20%近くの方が受給できる一方、練馬区ではわずか12%の狭き門。なんとか受けられても、支給金額も最下位の水準、中学校の入学準備金はわずか6万円、多くの区より2万円以上低い金額。それに対し練馬区は「実態に即して対応している」と回答、中学校の入学には最低でも10万、娘の制服を買うために自らの食事を我慢しなくてはいけない、そんな調査結果もある中で練馬区はどんな現実を見ているのでしょうか?

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小学校、600を超える教室で30度越え

小学校についても、夏場に30度を超える教室が600以上に達することが判明。子どもや教員からのSOS、練馬区にも届いているはずです。最上階での断熱改修が不可欠なのは明らかな中、練馬区は深刻にとらえるといいながらも、建て替え、長寿命化、屋上補修にあわせて実施すると答弁。これでは何十年かかるかも不明です。区役所本庁舎の室温が30度を超えたら緊急対策をしているはず、なぜ子ども達には厳しい環境での生活を何年も我慢させるのでしょうか。

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大二中を分断する道路、子どもへの影響について「デメリットはない」と答弁

大泉第二中学校を分断する2本の大型道路、保護者や地域の方から、道路を建設することで振動、騒音、廃棄ガス、など生徒への影響を心配する声が上がっています。また、200メートルトラックでのびのびと運動できる環境を無くさないで欲しい、大二中を象徴する桜の木を残してほしいという声も届いています。100名を超える卒業生が反対の声をあげ、3千人を超える陳情署名も集まっています。

しかし、区は子ども達の教育環境への影響について「取り組み方針を策定しないこと、もしくは策定までに時間を要することが、地域の方にとって最大のデメリット」と答弁。これだけの声が届く中、デメリットが無いと回答する姿勢には、子ども達に寄り添う姿勢は見られません。

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地域で唯一の豊渓中学校、突如として統廃合の候補に

そして、地域唯一の豊渓中学校、開校から80年近く、家族3代で卒業した方々も多くいます。地域で非常に愛され、中学校として唯一、学校運営協議会のモデル校にも選ばれました。運営協議会の検討委員会でも5年後も10年後も愛される学校にしていきたいとまとめたのがわずか1年前。そんな中で、練馬区は昨年12月、突如として統廃合の検討校とすると発表。生徒や住民からは驚きや怒り、反対の声が噴出。練馬区は「申し訳ない」としたものの、拙速だから謝罪をしたのではない、計画素案に対して抱かれたお気持ちに謝罪したなどと全く謝罪になっていない発言。住民の思いをさらに傷つけています。

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建設費が当初の1.5倍、練馬区立美術館の建て替え

一方で当初の1.5倍、109億円以上に膨れ上がった美術館の建て替え、練馬区ですら総額も、完成後の維持費も、そして完成がいつになるかさえもわかっていません。そんな中でも、練馬区の言葉を借りれば「決して立ち止まることなく」建設を続けるとのこと。「現在は上限を示せないが青天井ではない」としていますが、これが青天井でなければなんというのでしょうか?他方、地域で愛された谷原保育園の閉園に際しては、2万人を超す反対の声に対して「一円たりとも無駄にしない」と言っていました。では今回の美術館は何なのでしょうか?

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立ち退き反対の住民の家を3か月訪問、食品業者のあとをつけた

練馬区の姿勢を象徴するやり取りとして、予算委員会で示された立ち退きに反対する住民への対応があります。3か月もの間、毎週必ず訪問しインターホンをならすとともに名刺や手紙を置いてくることを続けたとのこと。それでも返答がなかったので、食品業者が定期的に自宅を訪問することをつきとめたうえで、課長の言葉をそのまま引用すると

「食品業者のあとをつけて遂に訪問するタイミングを掴むことができた。」そして一つ一つ寄り添いながら丁寧な対応をして1年後に立ち退きが成功したとのこと。

これを「寄り添った」と誇らしげに答弁すること自体が練馬区の問題の根深さを象徴していると思います。区民の暮らしに真に寄り添い、インクルーシブな練馬をめざすよう求め、討論とします。

最終的には反対12名に対して賛成38名で可決されましたが、今後も訴えた内容が実現するよう全力を尽くします。