就学援助

中学校の制服を買うために食事を減らす家庭も。練馬区の就学援助、23区で最低レベル

生活困窮世帯に学用品や制服などの費用を支援する就学援助、受給のための条件が練馬区は23区で2番目に厳しく、支給金額も23区で下から2番目。全国の自治体の8割以上の自治体よりも低いことが明らかに。同じ税金を払うのに、なぜ練馬区に住むと受けづらくもらえる金額も少ないのか、3月5日の練馬区議会補正予算の審議で訴えました。 制服代のために食事を減らしている家庭 厚生労働省が実施した最新の「2023年国民生活基礎調査」によると、18歳未満の子どもがいる世帯の65.0%が「生活が苦しい」と回答。昨年のセーブザチルドレンのアンケートでも制服代など入学の費用を工面するために、親自身の食事を減らすなど生活費を削るとの回答が生活困窮者の6割近くにも達しています。こうした中で就学援助が果たす役割は非常に大きいものです。 就学援助、23区で下から2番目の厳しさ。他区ではもらえるのに練馬区では受けられない状況も。 就学援助は学校教育法で規定。対象は生活保護の家庭と、生活保護には至らないものの厳しい状況にある家庭(準要保護者)の二種類です。準要保護者に対しては、自治体が独自に認定する基準を決めています。 認定基準には、練馬区を含め全国で8割の自治体が「生活保護の基準額に一定の係数をかけた額」としています。そのため、この係数が高ければ高いほど、就学援助を受けやすくなります。文科省の令和6年度調査(令和5年度就学援助実施状況等調査結果)では最も多いのは生活保護基準の1.3倍で全国の800近くの自治体が採用しています。 (出典:令和5年度就学援助実施状況等調査) 一方で、練馬区の認定基準は生活保護のわずか1.2倍、これは23区で2番目に厳しく、他区であれば受けられるのに練馬区では受けられない状況も。例えば小学生と幼児がいる4人世帯、練馬区では目安として受給上限が年収359万円なのに対し、生活保護基準の1.3倍の中野区では計算上は389万円、30万円もの差。さらに、基準が最も緩い文京区では1.67倍、年収500万円近くまで受給が可能。練馬区と140万円もの差が発生しています。 練馬区 就学援助受給の目安 練馬区が生活保護基準の1.2倍とした経緯は1984年の特別区長会での申し入れに基づくもので、現在のところ変更する考えはないとの回答でしたが、40年以上が経過した中で、実態にあわせて変更すべきです。 金額も23区で下から2位。港区とは4万円以上の差 いくら払うべきか、多くの自治体では国の生活保護世帯への予算単価を基準にしています。令和6年度の入学準備金について、国の予算単価は中学校で6万3千円です。文科省の令和6年度就学援助実施状況等調査でも全国で85%、1500近くの自治体がそれ以上と回答している中で、練馬区はわずか6万円。23区で下から2番目です。 (出典:令和6年度就学援助実施状況等調査) 練馬区は支給額について、国ではなく東京都の予算単価(財調単価)を用いているとの回答でした。しかし、都の財調単価は国の予算改訂の翌年度に、同額に改定することにしているので、必ず一年の遅れが生じています。さらに、金額についても、生活保護世帯が実際に受け取る入学準備金より非常に低いという課題も存在します。 国は平成30 年から入学準備金の上限額を大幅に増額、現在は中学校では8万1千円としています。そのため、特に中学校の入学準備金、練馬区では要保護者(8万1千円)と準要保護者(6万円)で2万円以上の差が生じています。こうした中で、23区のうち約半数の11区では、支給金額の根拠を都の財調単価(6万円)から、生活保護基準の入学準備金(8万1千円)に変更しています。練馬区も都の基準にあわせるのではなく、生活保護基準に変更すべきです。参考までに港区では令和元年度から生活保護基準に改訂しています。 港区 練馬区は要保護世帯と準用保護世帯とは家計の状況が違うので一律に一緒にするのはなじまないとのことでしたが、多くの自治体で入学に要する経費は、要保護者・準要保護者にかかわらず一時的な負担が大きいとして、要保護者と同等の水準で援助しています。 同じ税金を払っているにもかかわらず、練馬区に住むことで受け取れる入学準備金が2万円以上低い。さらにいえば、中学校の入学には平均で10万円以上かかるとも言われる中で、実態から大きく乖離しています。 練馬区は就学援助の支給について、23区でも2番目に支給基準が厳しく、さらに支給金額も入学準備金は23区で下から2番目、全国的に見ても8割の自治体よりも低い状況です。品川区では4月から制服代を所得制限なく無償化する予定です。少子化対策を言うのであれば、誰もが子どもを産み育てることに不安を抱かなくてもすむような環境作りを急ぐべきです! 過去の記事はこちらをご覧ください。

練馬区は子育て世帯に厳しい?就学援助の受けやすさ、23区で下から2番目

みなさんは就学援助をご存じでしょうか?お子さんが小中学校に通うご家庭の中で、経済状況が厳しい家庭に学用品代や入学に関わる費用などを補助する大切な仕組みです。しかし、練馬区は就学援助の受けやすさが23区で下から2番目、金額も23区で最低水準であることが文科省の調査から判明しました。 […]

練馬区立中学校生徒海外派遣について:お金がないと参加できない現実

練馬区は国際理解を推進するために友好都市のオーストラリア・イプスウィッチ市に中学校から男女1名ずつを毎年夏に派遣。約30年実施しています。子ども達は8日間現地で滞在、ホームステイなどを行います。選ばれた子どもには非常に貴重な機会。ただし、参加には4万円の自己負担が必要。 […]

【練馬区の子どもの貧困待ったなし、せめて他区と同じくらい子どもにお金をかけて!】<決算特別委員会の報告②>

消費税増税によって、子育て中の世帯、特に小中学生の子どもがいる世帯にはさらに重い負担がのしかかります。国が救済策として実施するプレミアム商品券も区内で対象となる方の5割以上は60代以上であり、小中学生の保護者の世帯にはほとんど関係ありません。そこで、特に生活が苦しい小中学生の世帯向けに支給している就学援助を増額するよう訴えました。以下、ご報告します。 【最初に】 練馬区では生活保護の1.2倍までの収入の世帯を「準」生活保護として、学校でかかる費用の一部を就学援助として支給しています。今年度、就学援助を認められたのは公立の中学校では4.5世帯に1世帯(22.3%)、小学校でも6.5世帯に1世帯(15.4%)に上っています。(この数字はあくまでも申請ですので、実態はもっと多くの方が必要としています。) 就学援助の中で、練馬区が入学時に支給しているお金(入学準備金)は小学校では47,380円、中学校では54,070円です。しかし、その金額では十分ではありません。小学校ではランドセル、中学校では制服など、入学時には多額の出費が必要です。ランドセルは平均4万円代、制服も6万円以上ともいわれており、その他の必要な学用品をそろえると、入学の段階で小学校では10万円、中学校でも15万円ほどかかるともいわれます。 こうした中で、保護者にとっては、この援助を増やしてほしい、というのが切実な思いです。私が通っている子ども食堂で、ある保護者の方が、「子どもの入学式、本当は嬉しいはずなのに、経済的に苦しくて迎えるのがつらい」と打ち明けてくれました。 【岩瀬の訴え】 他区の就学援助の支給の状況を事務局に調査していただきました。それを見ると、区によって入学準備金の支給額にずいぶんとばらつきがあることに驚きました。具体的には、高いところでは、小学校では67,380円、中学校では104,710円を支給している自治体もあります。23区の平均支給額を見ても小学校では約54,200円、中学校では66,100円です。練馬区は小学校で7,000円(13%)、中学校では12,000円(18%)も23区平均より低いことになります。こうした状況を勘案したうえで、ぜひ消費税増税に合わせて入学準備金の増額を行うべきです! 【区の回答】 一部に突出した単価設定を行う区がある中で、平均金額は各区の単価を単純に合計して23区で割り返した数字なのかなと考えてございます。単価設定は適切であると考えておりますので、現時点でこの単価設定を見直すことはございません。 【岩瀬の意見】 練馬区はこれまで何度も「子育てしやすい町」と標榜してきた中であまりに冷たい回答だと思います。本来、義務教育に関わる費用は憲法の趣旨に則って全て無償であるべきです。打ち上げ花火やアニメ振興、世界都市農業サミットなどの目立つ事業にお金を使うよりも、目立たなくても大事な声、地域で苦しむ声にこそ区は耳を傾けるべきです。今後も改善を求めて粘り強く訴えたいと思います。

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